9月3日の内閣改造で、安倍首相がライバル石破茂氏を力でねじ伏せたように見えるが、政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏の見方はまったく逆である。実は、「追い込まれているのは首相のほう」という。なぜか。

「今年4月の消費税率引き上げにより消費が落ち込み4~6月期のGDPはマイナス7.1%の大幅減。しかも首相は年末に消費税再引き上げの決断を迫られています。税率を上げると消費は冷え込む。アベノミクスのうち、うまくいっているのは金融緩和だけで経済成長につながる政策は見当たらない。経済が悪化すれば、集団的自衛権見直しの閣議決定で10%下がった内閣支持率は今後も右肩下がりで落ちていくでしょう」(鈴木氏)

しかも福島、沖縄県知事選挙は、自民党が大苦戦。敗北必至の情勢だ。

そこで首相は、内閣改造による人心一新、女性閣僚の増員による支持率上乗せを図ったわけだが、改造による“ご祝儀”はしょせん長続きしない。

消費税については再引き上げ延期の選択肢も残されているが、延期には新たな法案を国会で成立させねばならず、自民党内で安倍降ろしが始まる恐れがある。現実的には、ほぼ不可能だ。

「しかも延期すれば財務省にソッポを向かれ政権が維持できない。消費増税については首相と財務省で“暗黙の信頼”ができている」(同)

支持率上昇が期待できるのは拉致問題という外交カード。だがこれも北朝鮮が相手だけに蓋を開けてみないことには、どうなるかわからない。

結局、首相に残されているのは、首相の専権事項である解散権というカードだけである。

「首相は石破氏を切ることで、自分の息のかかった幹事長のもと、いつでも解散総選挙に打って出られる態勢を整えた。選挙に圧勝し来年9月の自民党総裁再選、長期政権へ、というシナリオです。だからこそ首相はうるさい石破氏を幹事長から外した。だが石破氏は負けたと思っておらず、来年、必ず総裁選に出馬する。2人の激突は避けられない」(鈴木氏)。総裁選直前の来夏の解散が濃厚だ。

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