コストが安い東海道新幹線の高速化

新幹線高速化に向けた周辺技術の開発が着々と進んでいる。

JR東日本が大阪大学と共同で、従来性能を損なうことなく、車体を軽量化する技術を開発したと発表した。アルミ合金の代わりにマグネシウム合金を素材に使って車体を軽量化することで、現在は時速270~320キロメートルの新幹線の速度が350~400キロメートルに引き上げられるという。2023年度の実用化を目指しているそうで、そのほかにも高速走行における騒音対策や短い距離で停止できるブレーキの開発など、新幹線のさらなる高速化に向けた周辺技術の開発も進んでいる。

リニア中央新幹線の27年開業(品川-名古屋間)を目指して、今秋にも工事を着工するJR東海にとっては、最も嫌なニュースだろう。

私はリニア中央新幹線に反対している。理由はPRESIDENT8月4日号の記事(「リニア中央新幹線『9兆円プロジェクト』の採算」)を参考にしてほしいが、新幹線で時速400キロメートルのスピードを出せるなら、最高時速505キロメートルのリニアの強みは薄れる。

東京-名古屋間約300キロメートルを40分で結ぶのがリニアの売り文句である。しかし、既存の東海道新幹線がJR東日本の新幹線の最高速度(東北新幹線の時速320キロメートル)で走れるようになれば東京-名古屋間は約1時間で、時速400キロメートルで走れるなら約45分でつながる。

来春、東海道新幹線の最高速度が現行の270キロメートルから285キロメートルに引き上げられるが、東海道新幹線が高速化できない理由の一つに曲率半径の問題がある。要するにカーブがキツイわけだが、車体を軽量化すれば相応のスピードアップが可能になる。

総工費約5兆円(最終的に大阪までつながれば約9兆円)というリニアの巨大プロジェクトと比較しても、10分の1以下のコストで東海道新幹線の高速化はできる。

南アルプスの地下を貫く前例のないトンネル工事は難航が予想されるし、環境問題や安全対策など未解決の問題や技術的課題が山積みで、総工費はどこまで膨れ上がるかわからない。それよりも東海道新幹線に磨きをかけるほうがよほど効率的だし、国民の利益にも適うと私は思っている。