世界の鉄道「ビッグ3」に勝つためには?

以前にも指摘したが、国土の70%が山岳地帯で直進的なルートを確保しにくい日本にリニアは向かない。しかし、世界にはマッチした地域があるし、輸出品として見ればリニアの商品力は高い。

そもそも日本の鉄道技術は世界でもトップレベルにあるが、事業者やメーカーは国内の鉄道事業にぬくぬくと安住していたために世界化が非常に遅れた。世界の鉄道ビッグ3と言われるシーメンス(ドイツ)、アルストム(フランス)、ボンバルディア(カナダ)だけで世界の鉄道車両生産の約6割を占める。川崎重工、近畿車輛など日本勢の世界シェアは足し合わせても1割に満たない。

しかし、国内の厳しい安全基準や利用者ニーズに磨かれた日本の鉄道技術、運行オペレーションも含めた鉄道システムは世界から高く評価されている。JR東日本が進めているような車両の軽量化も、世界化のうえでも重要な技術になるだろう。

外国人が高く評価する日本のIC乗車カード。

さて、世界から日本の鉄道を見学にきて、一番に評価されるのは「Suica」などのIC乗車カード(交通系電子マネー)である。

乗車チケットや発券機が要らないとか、タッチアンドゴーで改札をスピーディーにできるといった業務の合理化、簡素化はもちろんのこと、見学者の関心が高いメリットは、「Suica」によって駅を拠点とした地域の商圏を鉄道会社が取り込めるということだ。プラットホームの売店から駅中の店舗、駅ビルに入っているショッピングセンターやデパート、駅の周りの商店やコンビニ、さらにバスやタクシーに乗っても、カードの電子マネー機能で決済できる。しかも、スマホに組み込んでモバイル化すればICカードすら要らないときている。

本業が赤字でも、IC乗車カードで地域の商圏を取り込めばトータルで鉄道事業が黒字になりうるということが、実証されつつあるのだ。

日本の鉄道を見学にやってきた海外の政治家は皆、精度の高い運行オペレーションからIC乗車カードのシステムまで、日本の鉄道システムを丸々一式欲しがる。「わが国の近代化に資するものだ」と。