摘発されたのはごく普通の人びと
摘発されたのは、札幌市の女子高校生(17)から千葉県松戸市の会社員(35)、大阪府高槻市の国立大職員(45)まで、地域も年齢もさまざまな人びとである。キクチさんによれば、「北海道から大分県まで、上は46歳から下は17歳まで。半数近くは30代後半の男性だったが、その中に女性が複数含まれていた」、「出身地も、性別も、年齢も関係ない。互いの名前さえも知らない」人びとで、「一人だけ『書き込みは嘘だと思っていたけど、みんながやっているから、おもしろくてやった』と供述したが、それ以外の人物はネットのデタラメな書き込みを鵜呑みにし、本気で『殺人犯』、『強姦の共犯者』と思っていたらしい。書類送検された女性会社員は「他の人の書き込みを信用した。反省している」と述べた。
捜査にあたった警察官はキクチさんに「(加害者は)どこにでもいる、おとなしそうそうな感じだった」と述べたらしい。身元を特定され、取り調べで刑事から真実を告げられると、「ほとんどの人が『ネットに洗脳された』、『ネットに騙された』、『本に騙された』と供述して、『悪いのは嘘の情報を垂れ流した人だ』と他人に責任をなすりつける。最終的に『仕事のストレス』、『人間関係の悩み』、『離婚をして辛かった』、『私生活がうまくいかず、ムシャクシャしてやった』と被害者意識にすり変わってしまう」状態だったという。
紹介した最後にある、すさまじい書き込みはパート事務員の女性(23)のもので、彼女は取り調べに対して「掲示板のデタラメな書き込みを本気で信じてしまい、『人殺しが許せなかった』」と話し、さらに追及されると、「妊娠中の不安からやった」と供述したという。まもなく母親になろうとする女性の行為だったことは驚きだが、だれもが匿名をいいことにただのうっぷん晴らしをしていたわけである。面と向かうことがない相手だからこそ、真偽を確かめもせず、口に出すには憚れるような言葉を書き連ねた。