スマホの普及で思わぬ「盗撮」が浮上
世の中はいまやカメラにあふれている。街角や店舗などに設置された防犯カメラもそうだが、ここでは私たちが日常持ち歩いているスマホやケータイに話を絞る。その撮影機能は便利だが、使い方を誤ると迷惑この上ない。
ちょっとメモしたいと時刻表や路線図などを撮影して自分の役に立てる分にはかまわないが、例えば書店で本や雑誌の一部をメモ代わりに撮影したらどうか。これは「デジタル万引き」と呼ばれて、書店にとって迷惑な行為である。情報を撮影すること自体は違法行為とは言えないが、書店にとっては販売の機会を失うことになる。また、撮影した画像を友人に転送したら、著作権侵害になる可能性もある。
撮影の対象となる人や物を当該者に無断で撮影することは、一般に盗撮とか隠し撮りとか呼ばれている。軽犯罪法には「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」を罰する条文があるが、みんながカメラを持つようになって、「ひそかにのぞき見た者」は「盗撮した者」へ、場所はより一般的な「公共の場所」へ、対象も「衣服の下の下着」などに拡大されてきた。その取り締まりはもっぱら地方自治体の迷惑防止条例(名称は自治体によって異なる)によっている。
2012年に改正された東京都の「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」では、盗撮に関連して「何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であって、次に掲げるものをしてはならない。(中略)公衆便所、公衆浴場、公衆が使用することができる更衣室その他公衆が通常衣服の全部若しくは一部をつけない状態でいる場所又は公共の場所若しくは公共の乗物において、人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること」という条文がある。カメラ機器の発達にともない規制の対応も変遷してきた経緯がうかがえる。