誰も設計思想から逃れられない

サイバーリテラシー・プリンシプル(10)「アーキテクチャーは知らないうちに規制する」は、前回(9)(http://president.jp/articles/-/13552)のタコツボ化の話と関連する。私たちはタコツボに入り込んでいることに気づかない。いつのまにか行動や思考を規制されているということである。

アーキテクチャーとは、もともとは建築様式の意味だが、プログラムの世界では、ハードウェアやソフトウェアの設計方式(思想)のことを言う。アーキテクチャーの規制について最初に警告を発したのは、当時スタンフォー大学の憲法学教授だったローレンス・レッシグである。

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2001年に書いた『CODE』(翔泳社)で、私たちの行動を規制する4つの要因を上げ、下のように図示した(英語でコードというと、モールス・コード、文字コードなど信号を意味する場合もあれば、ハムラビ法典などの法典、法律、規範をさす場合もある。コンピュータの世界では、プログラムやアルゴリズム、アーキテクチャーなどもコードと呼んでいる)。

法(Law)が私たちの行動を規制するというのは、罰せられたくないので犯罪は起こさないということである。法は「制裁の脅しによって裏付けられた命令」である。

規範(Norms)はコミュニティによる制約である。お互いに仲良く快適に過ごすために、長い間に社会で培われた生活の智慧と言えよう。日本語の倫理の倫は「ともだち、仲間」の意味である。「殺すなかれ」、「うそをつくな」、「己の欲せざるところを人にほどこすことなかれ」などなど。家庭や学校で親や教師から教わって自然に身につけている場合が多い(ちなみに欧米において倫理の基本とされる「ゴールデン・ルール」は「人にしてもらいたいことを人に施せ」である)。法は最低限の道徳と言われるように、法がコミュニティの価値を具現していることもあるが、それと無縁のただのルール(交通法規など)の場合もある。