フィギュアスケーター 鈴木明子さん
1985年、愛知県豊橋市生まれ。邦和スポーツランド所属。バンクーバーオリンピック8位、GPファイナル2位(2011年)、世界選手権3位(12年)、全日本選手権優勝(13年)、ソチオリンピック8位などの成績をおさめ、今年3月に現役引退。現在、慶應義塾大学大学院附属システムデザイン・マネジメント研究所研究員。アイススケートショー出演や後輩指導にもあたる。著書に『ひとつひとつ。少しずつ。』(KADOKAWA)、9月1日に『壁はきっと越えられる』(プレジデント社)が刊行。
選手時代から「食事コントロールはしていますか?」と聞かれることが多いのですが、「食べたいときに、食べたいものを食べる」のが私のやり方です。疲れたらオレンジが食べたくなるとか、耳を澄ましていれば体の声が聞こえてきますからね。だから甘い物も食べたくなったらセーブしません。
というのも、18歳のとき、食事コントロールに神経質になりすぎ、摂食障害になった経験があるからです。母の「食べられるものから食べようね」の言葉に救われて1年で回復しましたが、その後も3年間はお肉を食べられませんでした。でも、動物性タンパク質からしか摂れない栄養素もあるし、海外遠征先では食事に困ることも。「これではいいスケートができるはずがない」と思い直し、食べ始めたのが「冷しゃぶサラダ」でした。やっぱり食事はバランスが大事なんですね。筋肉の質や体調が見違えるほどよくなりました。
おかげで今はお肉が大好物(笑)。一緒に野菜もたくさん摂るように心がけています。スケートは体を冷やしやすいので、サラダよりは温野菜。夏でもお鍋系の食事が多くなりますね。だから、お肉も焼き肉よりしゃぶしゃぶ派です。
東京での仕事が増え、美味しいところを探していたところ、紹介されたのが「赤坂武蔵」。もち豚とイベリコ豚と両方楽しめるこちらのしゃぶしゃぶは、山盛りキャベツを先にお鍋に入れる私向きのスタイルです。東京の食事処に決定ですね(笑)。
地元の名古屋では、スケート場に近い「御料理処 青木」によく行きます。いろいろな料理がありますが、ねぎとたんを焼いていただく「ねぎたん」がお気に入り。たんが見えないくらいねぎが盛られていて、練習の疲れが一気に回復します。
今年3月の世界選手権で選手を引退しましたが、現役生活に未練はありません。引退を決めてからの1年ほど、23年間のスケート人生の経験をどのように活かしていけばいいのか考え続けてきましたが、指導者や解説者以外の「セカンドキャリア」の道を広げることも、私の役割の一つかなと、今は思っています。そのためにも、氷の上に限らず、いろいろなことに挑戦していきたいですね。
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究所研究員としてキャリアについて講演するなど、現役時代には想像すらしませんでした。でも、私の経験が誰かの役に立つのであれば、それを伝えていくのも私に与えられた役割だと思います。スケートのレベルも向上させていきたいし、アイスショーに合わせた練習も必要です。時間がいくらあっても足りませんが、刺激的で楽しい毎日です。母は早く結婚して「普通の女の子」として幸せになってほしいと思っているようですけどね。