芸人 博多華丸さん
1970年、福岡県生まれ。博多大吉とのコンビで、90年に吉本興業福岡事務所の第一期生としてデビュー。九州でブレークし、デビュー3年で地元のテレビ番組「とことんサンデー」の司会に抜擢される。2005年、東京に進出。児玉清、川平慈英などのものまねで全国区の人気を獲得する一方、「R-1ぐらんぷり2006」に単独で出場。見事、優勝を果たす。現在は「ヒルナンデス!」(日本テレビ)などにレギュラー出演中。食通としても知られ、著書に『食べずに終われんばい!in福岡』(ヨシモトブックス)。
人生の残り30日で何を食べるか。そんなテーマで福岡の飲食店を紹介するグルメ本を出したことがあります。もつ鍋、水炊き、うなぎなど、正真正銘僕の行きつけばかり。店の人の似顔絵だって描けますよ。
食べることは小学生のときから好きでしたね。子どもって、どこそこの店にガンダムのプラモデルが売ってると聞くと自転車を飛ばして買いにいくじゃないですか。それと同じ感覚で、おいしいと聞いた店に自転車で食べにいくんです。福岡のラーメンは安いから子どものお小遣いで食べられるし、学割がきく店や大将の好きな球団の野球帽を被っていくと100円引きなんて店もあった。……その帽子を買うのに2000円ぐらいかかるんですけどね。
ファミレスにも憧れていました。週1回の外食は、親父の一存で近所の焼鳥屋ばかり。福岡って家族で行ける焼鳥屋がめっちゃ多いんです。メニューもいろいろあって、当時は1本50円から食べられた。親父は酒を飲むのが目的だから、少しでも長くいたいわけです。でも、僕らはお腹いっぱいになったら家に帰りたい。そういうとき、親父は必ず「焼きおにぎりば食え」と言う。焼きおにぎりは時間がかかるから、あと2杯は飲めるんです。サッカーでいえばアディショナルタイムですね。
親父の血を引いているからか、僕も酒はガンガンいきます。好きなのは焼酎。家では発泡酒の後に焼酎を水割りで4~5杯飲んで、お風呂に入ってからまた発泡酒の後に焼酎。僕はテレビが大好きで、家族が寝静まった後に録っておいたビデオを観ながら飲むのが楽しみなんです。
今は2週間おきに仕事で福岡に帰っていますが、行くのはやっぱり焼鳥屋など。フランス料理なんて気取った店に行くのは「Goh」ぐらいです。フランスと名のつくものは、ほかにフランスパンしか知りません(笑)。ここでもワインより焼酎を飲んでることが多いんですけどね。
まして、東京のこじゃれた店には足がすくんで入れません。というか、基本的に僕は東京にいい店は求めてないんです。だって、福岡が唯一、東京に勝てるのは食。接客がひどかったり、値段がやたら高かったりすると、「やったー、やっぱ福岡のほうが上!」って嬉しくなるんです。逆に「清武」のようなリーズナブルで旨い店に東京で出くわすと、最後の砦を失ったみたいな気持ちになる。悔しくて仕方ないです。
東京に拠点を移して来年で10年。嫁は都会に染まっちゃいましたが、僕としては50歳ぐらいで福岡に戻りたい。そして、地元のラジオ局でレギュラーを持って、出勤途中のおっさん相手に前日の福岡ソフトバンクホークスの試合について、ああだこうだしゃべるのが夢なんです。