築地市場が長編ドキュメンタリー映画に
江戸時代からあった日本橋魚河岸などの市場群が1923年9月の関東大震災で壊滅的な被害を受け、同年12月に旧外国人居留地を借りて、臨時の東京市設魚市場を開設したことを始まりとする築地市場。いまでは年間の取扱金額は5600億円強にも達し、「世界一の魚市場」と称されるようになっている。しかし、2016年には豊洲新市場への移転し、その長い歴史に幕が閉じられることになる。
こうしたなか、松竹が築地市場の四季の移り変わりを記録しながら、日本の食文化の真髄を描いていく長編ドキュメンタリー映画『Tsukiji Wonderland(仮題)』の製作を進めている。約1年に渡る長期取材の受け入れは築地市場にとっても初めて。今回の映画製作の狙いと、撮影開始にあたっての苦労について企画を担当した同社映像本部の手島麻依子さんは次のように語る。
「日本の魚食文化を支えてきた、現在の築地市場の姿を映像で残すことは今しかできません。折しも海外では鮨ブームが巻き起こり、出汁やうまみなど和食への関心も高まっています。誇るべき日本の食文化の真髄を、世界中の人に知ってもらうためにも映像として記録しておきたいと考え、築地市場の関係者の方々にお話をしました。最終的に今回の全面協力をいただくまでには、撮影の相談を始めてから半年ほどかかりました」
また、別な面での大きな特徴が、製作の費用の一部として700万円を目標に「クラウドファンディング(CF)」による資金調達に挑戦していることなのだ。「群衆」を意味するクラウドと、「資金調達」であるファンディングからなるこの造語は、大勢の人々から小口のお金を集めることを指す。同社が映画製作でCFを活用するのは初めてのケース。「資金調達もさることながら、日本の誇るべき文化を映画に残し、世界に広く発信するプロジェクトを大勢の人々と一緒に作り上げていきたいと考えました」と手島さんはいう。