高等な心理学を悪用したワルの手口
空き店舗だったところに、突然、お店がオープンして、お年寄りらによる長蛇の列ができている。そんな光景を一度は目にしたことがあるのではないだろうか。
これは、ポストに無料で日用品や食料品を配るといったチラシを投函して、高齢者たちを店舗に呼び込み、従業員らが店で楽しい話をしながら、来場者たちの気分を大いに盛り上げて判断能力を低下させ、高額な商品を売りつける催眠商法(SF商法)である。
この手口は実に巧妙で、後述する高等な心理学を応用している。だから、騙される人が後を断たない。
昨年、東京都はこの手口で、高齢者らを販売会場に呼び込み、がんに効く、膝の痛みが取れるなどの、ウソの効能を謳って高額な健康商品を販売していた業者に業務停止命令を出している。この業者は100万円を超える金額の商品券を購入する形で特別会員になると、より安く商品が買えるとして、たくさんの商品券を高齢者らに販売しており、その額は一人あたり平均で500万円を超えている。
私も過去に知人から、「無料でパンをあげる」と書かれたチラシをもらったので、催眠商法の現場に潜入したことがある。開場とともに、50人ほどの高齢者たちが店に殺到し、すべての席が埋まった。まもなくして、若い男女スタッフが登場し、中央にいる責任者らしき女性が大声で叫びだした――。