1本1000円の商品を100円でご奉仕!
「ご来場、ありがとうございます! これから、始まりのポーズいきますね!」
スタッフらは「アッ、ソレソレ!」と、掛け声を入れながら、右手を鳥のクチバシのように伸ばして、ダチョウのような恰好をして元気に踊りまくる。
すると、高齢者たちは孫の学芸会を見ているようなまなざしで笑いだし、一気に、会場の場が和んでいく。
踊りが終わると、女性が「まずは、チラシにあった通りの記念プレゼントをお配りします!」と言い終えるや、一斉に周りのスタッフらは会場を走り回り、全員にパンを配る。スタッフは汗だくだくである。
その一所懸命な姿を見て「ご苦労さん」などと声をかける高齢者もいる。
「それでは、商品の販売を致します!」
責任者の女性は一本の醤油を取り上げて、「このお醤油!」と叫ぶと、周りのスタッフも「このお醤油!」と声を合わせる。
「なんと、無添加です」「無添加です~」
「体に優しい醤油なので、高血圧の人も大丈夫」
「大丈夫!」
「ポックリ、いきませからね」
「ポックリ、いきません~」
高齢者らはどっと笑う。言葉を反復させながら、場を盛り上げていくのだ。
「本来、この醤油は1000円しますが、皆様に長生きしてもらうために、100円でご奉仕します。先着10名様のみです。ほしい方は手を上げてください!」
すると、ちらほらと手が上がり始める。私も値段が百円と聞き、あまりの安さに手をあげた。責任者の女性は手をあげた人の数を数えて、「はい! 10人になりました! ありがとうございました。それでは次は、この商品です!」と言って、塩の入った袋を取り上げる。これも市価の10分の1以下の値段で販売する。
こうして次々と信じられないような安さで食料品などを提供し、私はお煎餅やはちみつなど、500円ほどでビニール袋が一杯になるほどのお得な買い物ができてしまった。
さて、この販売会の目的は何なのか?