テラモーターズ 徳重徹
1970年生まれ。九州大学工学部卒業後、住友海上火災保険(当時)入社。29歳で退社後、米Thunderbird国際経営大学院でMBAを取得し、シリコンバレーでベンチャー支援事業に携わる。2010年、電動バイクの開発・設計・販売を手掛けるテラモーターズ設立。現在、同社社長。

僕がテラモーターズによって実現したいと言い続けているのは、この会社を日本発の世界的メガベンチャーにするということです。電気バイクというイノベーションを通して、例えば大気汚染がひどいアジアをクリーンにすること。そして、エネルギー問題を解決していくこと。そうしたビジョンによって世界規模の企業に成長するために、どこまでも前進していく。

うちの会社はほとんどが20代~30代の社員で、ほぼ例外なくインターンの後に採用しています。彼らを見ていて実感するのは、人というのはつくづく仕事によって成長するのだということですね。

社員には入社してすぐにフィリピンでの事業を任せている者もいれば、ベトナムに駐在している者、海外営業で1年の半分は日本にいない者もいる。基本的にもともとみんな高学歴で優秀な連中だから、最初はプライドばかりが高かったりもするんだけれど、仕事の中で鼻をへし折られ、難しい課題に自分の力で立ち向かっているうちに、どんどん成長していくのが目に見えて分かるんですね。

もちろん人によって成長の角度は違っていて、その中で素直さや謙虚さを持つようになった社員は、あるときから一気に伸びていくように思います。ただ、優秀さと素直さって、若者の中では反比例する要素になりやすいから、ときには僕が鼻を折ってやることもしますけどね(笑)。素直さや謙虚さをもって仕事をするということは、どんなに忙しくても1日に一度は反省する時間を持つということ。日々反省、日々進化だぞ、と。

確かに、20代の若手に事業をそこまで任せて大丈夫か、とよく言われます。

だけど、ソニーがニューヨークやヨーロッパで事業を立ち上げるとき、現地に行った顔ぶれはみな20代の若者ばかりですよ。「プロジェクトX」を以前に見ていたとき、そんな若者たちが3人、一緒にベッドの上に乗っている写真が出てことがとても印象に残っています。

日本が急速に成長していた時代を振り返れば、つい数十年前までは若者が責任とリスクを背負って、大きな仕事をすることは決して特殊なことではなかったわけです。その意味では、今の日本の大企業に元気がなく、なかなか人材が育っていかない理由もそこにあるのでしょう。