京都大学経営管理大学院准教授 曳野 孝氏が解説

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サンクコストを引きずると、赤字から抜け出せない

事業存廃の判断はサンクコスト(埋没費用)に左右されないように注意しなければいけません。サンクコストとは、今後の意思決定にかかわらず、すでに回収不可能になった費用を指します。競馬で説明するなら、最終レースの時点でそれまでのレースに投資した資金はすべてサンクコスト。最終レースで何をどう買おうと、それ以前のレースに投資した結果は変わらないからです。

曳野 孝氏

ところが1日の負けを取り戻そうとして、最終レースに一発逆転の馬券を買う人が少なくない。これはサンクコストに引きずられ冷静さを欠いた証拠です。運が良ければ当たるかもしれませんが、合理的な判断とは言えません。

事業でも同様の考え方が必要です。孫さんは「撤退は受け入れられない」と出版事業への思い入れを語りつつも、それまでの投資額や実績をリセットして、期限内に黒字化した雑誌だけを冷静に見極めました。経営学の見地からも、この判断は合理的といえます。

●正解【A】――大赤字でも、黒字化できる部分を見極めることが大切だから

※本記事は2010年9月29日に開催された「ソフトバンクアカデミア」での孫正義氏の特別講演をもとに構成されております。設問文等で一部補筆・改変したものがあります。

(大塚常好、小澤啓司、原 英次郎、宮内 健、村上 敬=構成 小倉和徳、浮田輝雄=撮影)
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