世界的金融危機の引き金になった、あのリーマン・ショックから5年が経った。緩やかに回復をみせるアメリカ経済だが、2014年はどういった動きになるのだろうか。
「基本的には回復基調です」と話すのは日本総研調査部副主任研究員の藤山光雄氏だ。「不況の主因だった住宅市場が着工数も増え、持ち直しています。09年には10ポイントほどだった住宅市場指数も、13年には60ポイントまで回復。不良債権が減って家計の重荷も取れてきている」。
さらに、雇用者数もリーマン・ショック以前の水準に回復しつつあるのだが「問題は質」と藤山氏は言う。「確かに雇用者数は増えましたが、約半分はパートタイマーです。彼らのほとんどは小売りや外食といった比較的賃金の低い職で、単に雇用者数が増えても、所得水準の回復には至っていません」。
また、少しずつ下がっている失業率も楽観していいものではない。失業率が下がった要因のひとつが、求職意欲喪失者の続出によるものだからだ。
「失業率は、失業者数を求職者で割り算して算出します。経済情勢を理由に職探しをやめてしまう人が増えると失業率が下がるように見えますが、雇用環境がよくなると職探しを再開することが考えられますので、これから失業率が下がりにくくなると思います」(藤山氏)
労働者の所得を増やして適正な需要をつくらなければ、本格的な景気回復にはならない。労働者への富の分配は日米両政府の課題のようだ。
(ライヴ・アート=図版作成)