対象者が拡大されたとはいえ、この相続時精算課税制度は慎重に利用する必要があります。なぜなら、相続時精算課税制度を一度利用してしまうと、前出の暦年課税(年間110万円までの贈与は非課税)が利用できなくなってしまうからです。特に、財産が多く相続税が高くなりそうな富裕層はこの制度の利用について、相当慎重に検討する必要があるといえるでしょう。

改正の3つ目は、30歳未満の子や孫に対する教育資金の一括贈与を1500万円まで非課税とするというもの(平成25年4月~27年12月)。祖父母など(贈与者)が信託銀行に金銭信託の預け入れをします。子・孫は、学校生活で必要な入学金や授業料など、また学習塾、予備校といった学校外の教育費用の支払いに預け入れられたお金を使うことができます。

なかなかいい仕組みですが、落とし穴もあります。子・孫が満30歳になったときに贈与したお金が残っていたら、その金額に贈与税がかかってしまうのです。

例えば、8000万円の財産を持つ祖父(法定相続人は3人)が孫に1500万円の教育資金を贈与したけれど、孫は進学をすることなく30歳時点で1000万円を使い残したとします。

この制度により、祖父は、自らの相続財産を1500万円減らすことになり相続税を約160万円節約できる。しかし、孫の使い残しの1000万円には贈与税が約180万円。結局、20万円弱もの損になるのです。子供や孫の進路は親たちの思い通りになるとは限りません。孫のためにもなり、節税のためにもなると思って行った教育資金の贈与で結果的に税負担増ということもあるのです。

(構成=岡村繁雄)
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