フカヒレだけではないサメの使い道
サメの使い道と聞いてまず思いつくのは、中華料理の食材「フカヒレ」だろう。ヨシキリザメやモウカザメ、アオザメの尾ビレや背ビレなどを乾燥させて作る高級食材である。
居酒屋でときどき見かける「梅水晶」もそうだ。サメの軟骨を細切りにして梅肉などと和えた珍味で、さっぱりした味わいから酒のつまみとして人気を博す。
産地である気仙沼では、一風変わった名物にもなっている。モウカザメの心臓を刺身で食べるのだ。「もうかの星」と呼ばれるこの名物珍味は、名前が示すように星に似た形をしており、新鮮なうちに薄くスライスして塩・ごま油などで食べると、豚などの「レバ刺し」に似たコリコリした食感で、濃厚な旨味が味わえる。
それだけではない。サメには多くの有用成分が含まれており、さまざまなサプリメントにも加工されている。軟骨にはコンドロイチンやグルコサミンがたっぷり含まれ、関節痛や腰痛などへの効果が期待されている。カルシウムやリンも豊富で、健康補助食品として人気がある。
また、サメの肝臓から取れる「肝油」には、脂溶性ビタミンA、Dが多く含まれる。こちらは視覚や粘膜の健康、骨の形成などに関わりのある栄養素とされる。肝油に含まれる成分を分離して精製したスクワランも、食品や化粧品などの原料として利用されている。
さらに、サメの皮は水に強いため、高価な財布やバッグの素材として利用されるほか、ワサビをおろすときに使う「サメ皮おろし板」にも活用されている。
サメと切っても切り離せないはんぺん
しかし、こうした用途に使われるのは、ヒレや軟骨、肝臓、皮など魚体のごく一部に過ぎない。一方、気仙沼港の関係者は「サメは捨てるところのない魚」だという。では、魚体の大半を占めるサメ肉は何に利用されているのか。その答えは、練り製品(練り物)の原料である「すり身」である。
練り製品のパッケージを裏返してみると、原材料名として「魚肉すり身」と書かれている。この中に、加工したサメ肉が含まれているのだ。
なかでもはんぺんは、サメと切っても切り離せない。ある練り製品メーカーの関係者は、「江戸時代にフカヒレが中国へ輸出されるようになった際、サメの身が余ってしまい、何かに使えないかと考えた結果、生み出されたのがはんぺんと言われている」と話す。
サメの中でも特にヨシキリザメは、はんぺんのフワッとした食感を出すのに最適とされている。練り製品大手の紀文食品でも、原材料として「主にヨシキリザメ、一部アオザメも使用している」という。同社広報によると、「サメのすり身の筋原線維は細く、空気を抱き込みやすい性質がある。当社のはんぺんは、軽い食感を品質の特長としており、その軽さと柔らかさを実現するのに適している」と説明する。
東京・日本橋には「ヨシキリザメとアオザメがなければ、はんぺんはつくらない」という老舗の練り物店もあるほど、サメ肉は貴重な原料なのだ。


