- 【第1回】「この苦しみが一生続くのか」貯金2000万+年金15万の余裕老後から崖落ちした65歳独身男性の"人生最大の後悔"
- 【第2回】5年繰り下げで年金42%増はお得のはずが…60代夫婦が引き換えに失った「何ものにも代えがたいもの」
※本稿は、水上克朗『56歳で崖落ち。そこから資産を「1億円」に増やしたFPが教える 老後破産しない選択』(オレンジページ)の一部を再編集したものです。
突如現れた老後の「固定費地獄」
「あと5年でこのマンションのローンも終わるな……」
柴崎幸彦さんはいつものようにロビーで管理人さんに挨拶をされた後、仕事先に向かいながら感慨深げにつぶやいていました。
中小の製麺会社で35年勤め上げ、ようやく迎える定年でした。
柴崎さんが都内に夢の分譲マンションを購入したのは、ちょうど30年前の30歳の時です。やっと貯めた400万円を頭金にして、35年のローンを組んだのです。
本来は65歳で完済予定でしたが、60歳で受け取る退職金で残りの住宅ローンを一括返済してしまえば、老後は悠々自適だろうと漠然と考えていました。
年金生活が始まる65歳以降は住居費もかからず、夫婦ふたりで穏やかに暮らしていこう。それが柴崎さんの描いていた老後の設計図でした。
妻の急死の次に、退職金大幅減
ところが3年前に妻の美智子さんはくも膜下出血を起こし、あっという間に旅立ってしまったのです。
しばらく柴崎さんは呆然自失状態でした。当時54歳だった妻の美智子さんとは長年のふたり暮らし。子どもはいませんでした。だからこそ、「老後の安心を確保しておきたい」と、無理のない返済計画を立ててきたつもりでした。
しかしその計画は、会社の急激な業績悪化によってあっけなく崩れ去ります。
長年メインだった取引先が、コンビニやスーパーのプライベートブランド商品に切り替えた上に、円安による原価コスト増といったことが重なりました。資金やキャッシュフローに余裕のない中小企業にとって、大口取引先がなくなることは死活問題です。
そうしたタイミングでの退職となり、退職金は想定していたものより大幅の減額になってしまいました。
一方人手不足でもあった会社には、引き続き再雇用として働くことになりましたが、勤務時間も減り、社会保険の加入対象からも外れ、給与も社員時代の3分の1になってしまいました。

