いっそ売却しても手元に残る資金はわずか

住んでいたマンションは築30年を迎え、設備の老朽化も目立ち始めていました。

周辺には新築物件も増え、資産価値は購入時よりかなり下落しています。

売却価格からローンの残債や諸費用を差し引くと、手元に残る資金はわずかになってしまいます。

その資金で、新たな住まいを確保するのはとても難しいことが予想されました。

仮に賃貸に移るにしても、60代非正規雇用の世帯主に対する審査は厳しい。

つまり物件は、「出ることもできないマンション」になっていたのです。そして、同時に「住み続けるしかないマンション」でもありました。

柴崎さんは愕然としました。

かつては「安心を買った」はずの住まいが、今は「逃げ場のない固定費の箱」になってしまっていました。

住宅は“資産”ではなく“契約”である

柴崎さんが私の「お金の悩み相談」に来られたのは、その頃でした。

私が家計を「見える化」してみると、状況は明確でした。

・住宅ローン残債/火災保険/地震保険
・管理費、修繕積立金(将来増額含む)
・固定資産税
・生活費

これらを合算すると、年金支給までの5年間で、600万円規模の赤字が見込まれました。

水上克朗『56歳で崖落ち。そこから資産を「1億円」に増やしたFPが教える 老後破産しない選択』(オレンジページ)
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「マンションって、買ったら終わりじゃないんですね……」

柴崎さんは数字を見つめながら、ポツリと言いました。

住宅は“買ってからが契約の始まり”です。ローンが終わっても、管理費・修繕積立金・税金といった支払いが一生続く“固定費”です。

当たり前ですが、マンションは購入してからローンを始めとした支払い義務が発生します。

ところが老後においては、一般的に収入の減っていく可能性が高くなります。だからこそ、住宅は「安心」ではなく、「長期の固定費契約」として捉える必要があるのです。