売上が伸びても、次の資金が必要になる
その重さを示す数字が、9月に報じられた。英フィナンシャル・タイムズは9月18日、OpenAIの社内資料をもとに、同社の見通しを伝えた。売上は2026年の360億ドルから、2030年には3500億ドルへと伸びる。一方で、計算資源には2030年までに8560億ドルを投じる。その結果、2026年から2030年までの累計で、約2780億ドルのマイナスのフリーキャッシュフローを見込んでいるという。同社は3月末に1220億ドルの資金調達を終え、企業価値は8520億ドルと評価されたが、報道によれば、その資金も2028年には使い切る見通しである。
これは会社の将来見通しについての報道であり、確定した損失額ではない。なお、報じられた数字の正確性には、同社の財務担当者から異議も出ていると報じられている。OpenAIは2月、投資家に対して、2030年までの計算資源の目標を約6000億ドルと説明していた。社内の見通しと公の目標のあいだにも開きがあり、数字そのものは今後も動きうる。報じられた計画が示すのは、売上が大きく伸びても、支出が先行する可能性である。
ここで、3つのお金を分けて考えたい。売上は、顧客にサービスを提供して得る収入である。出資は、将来の成長を期待する投資家から受け取る資金である。設備投資は、将来の収入に先立って出ていく支払いである。同じ「お金が入る」でも、売上と出資では意味がまったく違う。売上の伸びと、資金調達の成功を分けて見ると、プロメテウスの肝臓の比喩が具体的になる。鷲に食われた肝臓を、夜のうちに再生させているのは何なのか。
では、その再生の資金は、どこから来るのか。
自らの尾をくわえる蛇…お金の出し手が、売り手でもある
ここで、もう一つの古い象徴を借りたい。自らの尾をくわえ、輪をつくる蛇、ウロボロスである。本書の第1章には登場しないが、AIの資金の流れを読むのに欠かせない補助線になる。
その姿は、古代エジプトのツタンカーメン王の墓から見つかった厨子の一つにも描かれている。尾をくわえた蛇が人の姿を取り囲み、再生や守護に関わる文脈で用いられた。古代エジプトでは、太陽は夕べに沈むと夜の冥界を旅し、朝に再び生まれると考えられていた。輪をなす蛇は、その夜の旅と再生を守るものとして描かれたと解されている。夜のうちに育つプロメテウスの肝臓と、夜を越えて再び昇る太陽。ギリシャでもエジプトでも、古代の人々は「夜の再生」に、終わらない循環の姿を見ていたのである。
ギリシャ語の「ウロボロス」は、「尾を食らうもの」を意味する。後の錬金術の写本では、尾をくわえる蛇の輪の中に「一は全」と記され、終わりと始まりがつながる循環の象徴となった。ここで借りたいのは、自分を食べて生き続けるという奇譚ではない。終点が再び出発点へとつながる、その輪の形である。

