「過度なストレッチ」は筋肥大を妨げる

もしあなたが「60秒ルール」を破って長時間ストレッチをしてしまった場合、その代償は「その日の調子が悪い」だけでは済みません。長期的な筋肥大にもマイナスの影響を与えることが、過去の研究で警告されています。

60秒の1秒手前を示すストップウォッチ
写真=iStock.com/Vitalij Sova
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例えば、ルイジアナ州立大学のネルソンらの研究では、ストレッチをしたグループはレッグカールの回数が24%も減少しました。ブラジルのバローゾらの研究でも、レッグプレスで総負荷量が20.4%減少しています。

つまり、早く限界が来てしまうため、筋肉に十分な刺激を与えられないという事態に陥るのです。

さらに長期的な影響を調べたジュニアらの研究では、10週間のトレーニングにおいて、「ストレッチなし群」の外側広筋が12.7%太くなったのに対し、「ストレッチあり群」はわずか7.4%の成長にとどまりました。

これらはすべて「過度なストレッチ」がもたらす弊害です。だからこそ、私たちは「60秒以内」という安全圏を守る必要があるのです。

一方で、ワーネケらのメタアナリシスはもう1つの朗報をもたらしました。

スクワットの高重量のような「最大筋力」には慎重さが求められる一方で、ジャンプやスプリントといった「瞬発的な動作」には、ストレッチの悪影響が見られなかったのです。

それどころか、ジャンプパフォーマンスに関しては、わずかながらプラスの効果(効果量0.21)さえ確認されました。

「バネを殺さないためにストレッチは禁止」という古いコーチングも、これからはアップデートが必要です。短時間であれば、むしろ身体のキレを引き出すスイッチになり得ます。

数十秒の意識がトレーニングの質を変える

ここまでの結果から、はっきり言えるのは……

「筋トレ前の静的ストレッチは60秒を超えるとNG」

ということです。逆に言えば、

「60秒以内の短いストレッチなら、筋力や筋肥大に悪影響はほぼない」

ということになります。

ウォームアップの一環としてストレッチをしたい場合は、時間に気をつけることでマイナスの影響を避けられるのです。

ストレッチは悪者ではありません。ただ、時間を守ることが条件です。その数十秒の意識が、トレーニング全体の質を変えます。