「60秒以上のストレッチ」は体に悪影響

データを見ると、ストレッチ時間と筋力低下の関係は残酷なほど明確です。

60秒以上の静的ストレッチングによる筋力への影響
出所=『科学的に正しい筋トレ大全』(KADOKAWA)

・60秒以上となった場合(≥60s)

ここで初めて明確な「害」が出ます。最大筋力の低下を示す効果量は−0.84となり、これは統計的に「激減」と言っていいレベルです。まるで輪ゴムを限界まで伸ばして放置した後のように、高重量を支える力が失われてしまいます。

・60秒未満の場合(<60s)

驚くべきことに、この範囲内であれば筋力への悪影響はほぼ消失します(効果量−0.13)。これは無視できるレベルの誤差であり、筋肉のハリを取り、動きやすくするメリットだけを享受できるスイートスポットなのです。

つまり、私たちはこれまで「ストレッチそのもの」を恐れてきましたが、本当に恐れるべきだったのは「長時間のやりすぎ」だけだったのです。

ストレッチが長すぎると「ブレーキ」がかかる

では、なぜ長時間のストレッチで筋力が下がってしまうのでしょうか?

その理由として、以下の3つのメカニズムが考えられています。これらは「60秒を超えたとき」に強く働くブレーキのようなものです。

①神経活動の抑制

筋肉は、脳からの指令を神経が伝えることで動きます。しかし、長いストレッチの後にはこの神経の“指令”が弱くなる傾向があります。つまり、筋肉を動かす運動単位のスイッチが入りにくくなり、全力を出そうとしても筋肉がサボってしまうのです。

②筋肉の弾力性が低下

筋肉はゴムのような性質を持っており、適度な弾力によって効率的に力を発揮しています。ところが、長く伸ばしすぎるとこの弾力(粘弾性)が低下し、パワーを発揮しにくい“ゆるんだ状態”になってしまいます。

③血流の阻害による疲労促進

強く引き伸ばされている間、筋肉は一時的に阻血状態になり、代謝物が除去されにくくなります。これにより疲労物質が溜まりやすくなり、筋持久力が下がる可能性があります。