半導体は現代人の生活に必要不可欠だ。最先端の半導体開発・製造をすべく、各国で熾烈な競争が繰り広げられている。半導体商社の経営者である新川裕也さんは「資本主義の王者である米国は台湾TSMCに対抗するべく巨大国家プロジェクトを進めている」という――。

※本稿は、桶井道・新川裕也『3倍・5倍・10倍の神株が続出! 半導体株&AI株投資大全』(すばる舎)の一部を再編集したものです。

アメリカ国旗と星のシンボルが入ったマイクロチップ
写真=iStock.com/adventtr
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国内回帰する米国の半導体戦略

2020年以降のコロナ禍では半導体不足が深刻化し、米国では自動車生産の停滞などサプライチェーンの脆弱性が露呈しました。このとき、特に不足したのが成熟ノード(従来型の製造技術)の半導体チップであり、日常生活のみならず、国防産業にも影響が及ぶ事態となりました。

同時期には、世界の先端半導体生産の約9割を台湾のTSMCが担っている現状も、大きな懸念材料として議論の俎上に載りました。万一、台湾で政情不安や紛争が起これば、スマホから軍事装備まですべてに影響が及ぶことは避けられません。

さらに、後述するように中国政府が国家を挙げて半導体技術の国産化・高度化(「中国製造2025」など)を進めて台頭する中、米国は先端分野での優位維持と安全保障にかかわる危機感を強めました。

こうした背景から、半導体製造の国内回帰政策として制定されたのがCHIPS and Science Act、通称「CHIPS法」です。2022年8月にバイデン大統領(当時)が署名したこの法律には、今後の半導体供給網を強靭化しつつ、中国など懸念国への過度な依存や技術流出を防ぐ狙いがあります。

総額約527億ドル予算のCHIPS法

CHIPS法は総額約527億ドルもの予算を投じ、米国内の半導体製造基盤と研究開発を包括的に支援する内容です。

内訳は大きくふたつに分かれ、最大390 億ドルが工場の建設・拡張など製造分野の補助金にあてられます。残りは国家半導体技術センターの設立や先端パッケージ技術の開発、人材育成など半導体の研究開発支援に投じられます。

この法律の政策目的は、米国で先端チップの生産能力と技術力を回復し、産業の心臓部ともいえる半導体の供給を自前で確保することです。その裏には、経済安全保障と中国への対抗というふたつの狙いがあるのは想像に難くありません。

CHIPS法の成立を受け、多くの半導体メーカー(インテル、TSMC、サムスン電子、グローバルファウンドリーズ、マイクロン・テクノロジーなど)が米国内での大規模投資計画を発表し、米国各地で半導体工場の新設ラッシュが起きています。

その結果、2024年末までに20州以上で累計300億ドル超の補助金支給が決定し、これを呼び水に約4500億ドルもの民間投資が表明されました。

米国政府は、建設・製造・サプライチェーン全体で12万5000人超の雇用創出が見込まれるとしています。各プロジェクトの多くは今後数年で稼働を開始する予定で、長期的な供給能力の底上げにつながる見通しです。