スマホは「通知オフ」では意味がない

集中を支える「外部環境」の話もしておきましょう。テキサス大学オースティン校のウォードらは、スマートフォンを机の上に置くだけで(画面を伏せていても)認知能力が低下することを、800人近い参加者を対象に示しました。(※4)

使っていない、あるいは、通知をオフにしている。にもかかわらず、「そこにある」だけで脳がリソースを消費してしまうのです。机の上から別室へ移すだけで、成績が有意に向上しました。

別室にスマホを置く
写真=iStock.com/FreshSplash
別室にスマホを置く ※写真はイメージです

また、複雑な問題を解くとき、頭の中だけで処理しようとすると机が狭くなります。

ニューサウスウェールズ大学のスウェラーが主張した認知負荷理論によれば、処理すべき情報の量がワーキングメモリを超えると、理解が止まるといいます。(※5)

そこで有効なのが「外部化」、つまり、考えを紙や画面に書き出すことです。「前提・目的・制約」を先に書き出してから取り組むだけで、頭の中の荷物が減り、思考の質が上がります。

ノートは記録のためだけでなく、脳の作業机を拡張する道具でもあるのです。

もうひとつお伝えしたいのは「チェックと偏りの修正」です。人間の思考には、知らず知らずのうちにかかる「バイアス(偏り)」があります。

最初に浮かんだ答えに引きずられるアンカリング、今までどおりの方法を変えたくないという現状維持バイアス、少ない情報から大きな結論を出してしまうバイアス(少数の法則)。

これらは意志が弱いから起こるのではなく、脳の省エネ機能として設計されているため、気合いで直すことが困難です。

机を片付け、最初の1問だけ解く

そこで科学が提案するのは、「反証を探す問い」をしくみとして入れることです。

「別の解釈はないか」「これと反対の証拠はあるか」「データの出所は確かか」の3点を、結論を出す前に確認するだけで、思考の質が大きく変わってきます。

また、集中力には「入口の儀式」が効きます。始める前に机を片づけ、タイマーをセットし、最初の1問だけ解くというルーティンを固定すると、「やるかどうか」を毎回考えずに済み、エネルギーが本来の作業に向かいます。

先延ばしのほとんどは、やる気がないのではなく、「始める」という行為への摩擦が大きすぎることから生まれるのです。

みなさんに意識してほしいのは、集中力を「増やす」より「守る」という発想に切り替えるということです。

ワーキングメモリの作業机は、放っておくと散らかります。マルチタスク、スマホ、中途半端な切り替え、過度な認知負荷が、気づかないうちに机を狭くします。

一方で、しくみをひとつ変えるだけで、同じ時間・同じ努力が、ずっと大きな成果に変わることも研究は示しています。

作業机を広く保つ技術は、天才だけに与えられたものではありません。誰でも使えるうえに、今日から始められるのです。