※本稿は、著・小澤健祐、マンガ・奈良裕己『40代・50代でもよくわかる 宇宙一やさしいAIの教科書』(ワン・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
AIで消える仕事、残る仕事の本当
不安な話題ほど、感情だけで判断すると誤解を生みがちです。私は、不確実な仕事の未来を考えるときこそ、公開されている調査データや企業の動きを見ながら判断するのがよいと思います。数字は万能ではありませんが、少なくとも「全部なくなる」「何も変わらない」といった単純な見方から、私たちを遠ざけてくれます。
「世界経済フォーラム」(WEF)が発表している「The Future of Jobs Report」は、世界中の主要企業の人事担当者・経営者へのアンケートをもとに、雇用の未来を予測する報告書です。2023年版・2025年版ともに、各国メディアやアナリストが繰り返し引用してきました。
WEFが示している主な見立ては、ざっくり次のような内容です(数値は2025年版の公表内容をもとにしています)。雇用の「総量」は、世界全体の推計では差し引きで増える方向とされています。AIや自動化によって失われるとされる職務がある一方で、新たに生まれる職務はそれを上回る規模で見込まれています。
2025年版WEFレポートでは、2030年までに世界全体で新規創出される職務がおよそ1.7億件、失われる職務がおよそ9200万件とされ、数千万件単位の純増が見込まれています。
ただしこれは世界全体の推計であり、国・業界・職種によって影響は大きく異なります。「AIで仕事が消える」という単純なイメージとは違う構図です。
仕事の中身が変わっていく
ただし「仕事の中身」は確実に変わります。WEFは、現在の業務時間のうち、向こう数年で人間が担う割合は減り、機械やAIが担う割合が増えると一貫して指摘しています。同じ「営業職」「事務職」「管理職」という肩書きでも、5年前と今と5年後では、業務の中身がまったく違うものになっていく。これはすでに始まっている現実です。
日本国内の動きも見ましょう。経済産業省は、2010年代から「DX人材」「AI人材」の不足を継続的に警告しています。2030年までに国内で数十万人規模のIT人材が不足する可能性がある、という試算も繰り返し公表されてきました。
総務省の「情報通信白書」でも、AIや生成AIの活用が日本企業の生産性向上にとって不可欠なテーマとして位置づけられています。つまり、「AIを使える人材は、これから10年、構造的に足りなくなる」というのが、政府機関と国際機関の共通見解なのです。

