※本稿は、堀田秀吾『科学的に証明された 頭のいい人が習慣にしている 学び方の戦略』(アスコム)の一部を抜粋・再編集したものです。
集中力を左右する「脳の作業机」
「頑張って勉強しているのに、なかなか頭に入ってこない」
こう感じるとき、多くの人は根性が足りないと自分を責めます。しかしほとんどの場合、問題は根性ではなく、脳の「作業机」の状態にあります。
机の上が散らかっていたら、いくら優秀な人でも作業は遅くなります。道具の出し方も非効率になるし、大事なメモを探すだけで体力を使います。
脳に関しても、まったく同じことが起こっているのです。
記憶術や学習法の前に、脳が集中しやすい状態をつくることが先決です。まずは、脳の「作業机」の正体を知っておきましょう。
スターリング大学のバデリーとヒッチは、人間が考えたり学んだりするときに使う、一時的な情報の保管と処理をおこなう「ワーキングメモリ」というしくみを提唱しました。言葉の記憶を扱う音韻ループ、視覚情報を扱うシステム、そしてそれらを指揮する中枢実行系からなる構成です。(※1)
ワーキングメモリは、脳の中でリアルタイムに情報を保持しながら処理する作業領域で、まさに「頭の中の作業机」といえます。
そして、この机には「広さに限りがある」という決定的な弱点があります。一度に多くのことを載せようとすると、あふれて落ちてしまうのです。
「複雑な問題になると、途中から頭が追いつかない」という感覚の多くは、能力そのものではなく、この机の使い方の問題になります。
20〜30分ごとに1〜2分の切れ目を作る
机を狭くする最大の原因は「マルチタスク」です。「同時にいくつかのことをこなせる人は頭が良い」という印象があると思いますが、残念ながら科学的な支持は得にくい考え方です。
次に、意外と見落とされがちな集中の敵が「切り替えのコスト」です。
ミネソタ大学のルロワは、作業を途中で切り上げて別の作業に移ると、前の作業に関する思考が残り続け、新しい作業の質を下げる「注意の残留」という現象を報告しました。(※2)
もうひとつ、長時間の集中に関する大きな誤解があります。「集中が切れたのは、注意力が尽きたから」という考え方です。
イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のアリガとレラスの実験では、50分間休まず作業した群は成績が低下しましたが、途中で短い注意の転換を挟んだ群では、低下がほぼ見られませんでした。(※3)
問題は注意力が「減った」のではなく、同じ目標への意識が「慣れ」によって薄れていくことにあります。だから、脳を休ませるより、いったん目標から離れて「再起動」する短い切れ目のほうが効くのです。
日々の勉強に落とし込むなら、20〜30分ごとに1〜2分、いったん目標から離れる切れ目をつくるといいでしょう。

