ロシアによる隣国ウクライナへの侵略戦争が長期化している。いま、戦場では何が起きているのか。元陸上自衛隊戦車連隊長で軍事史研究家の木元寛明さんは「ウクライナが繰り出した一人称視点ドローンが、戦場の力学を書き換えた」という――。
※本稿は、木元寛明『AIドローン戦争 現代戦を一変させる恐怖の兵器』(宝島社新書)の一部を再編集したものです。
侵攻から4年半、終わりが見えない戦争
2022年2月、ロシア軍はウクライナに軍事侵攻したが、5年目に突入した今日(2026年9月の本書執筆時)に至るまで、戦争が終結する気配は一向に見えない。
戦場の実態は、初期には動きのある機動戦の様相を呈したが、時間の経過とともに陣地戦に移行し、長大な戦線は膠着状態となっている。
ウクライナ戦線が機動戦から陣地戦線へと変化した要因は、戦争が長期化するにしたがって、ロシア軍もウクライナ軍も、機動戦の主体である機甲戦力と火力戦の骨幹となる砲兵戦力が消耗し、枯渇したからだ。
コストをかけられない長期戦の「主役」
戦線が膠着状態に陥ると、最前線の部隊はお互いに近距離で対峙する。このような状況では、敵情を収集するために斥候を派遣する。斥候は敵の監視下・火制(火力で敵を制圧すること)下にある地域に潜入するため、人的被害も漸増せざるを得ない。
戦車、野砲、ミサイル、弾薬などは、無限に存在するわけではない。短期決戦であれば、高額で高性能な装備に頼ることが可能だが、想定外の長期戦になると、戦いのコストを下げざるを得なくなる。廉価で使い捨てできるものが望ましく、その答えの一つがドローンだった。

