10億円を超える戦車をドローンが撃破
湾岸戦争(1991年)当時のM1エイブラムス戦車は、コンピューター、電子技術、暗視技術の進歩によるFCS(射撃統制システム)――照準システム、測距メカニズム、弾道データ・センサー、射撃統制コンピューター、砲制御システム、砲安定装置(スタビライザー)――により、初弾必中に限りなく近づいた。
120ミリAPFSDS弾の値段は、1発50万円前後(わが国では約100万円程度)で、仮に2発で敵戦車を撃破すれば、100万~200万円で、10億円を超える戦車を撃破することが可能だ。
戦車砲の命中精度が劇的に向上し、陸戦における戦車の地位は不動であるかのように見えた。これに待ったをかけたのが、ウクライナ戦争で華々しく登場したFPVドローンだった。
FPVドローンの製造費用は、市販の部品を使用すれば、数十万円で可能といわれる。戦車砲弾1発の値段と大差ない。だが、戦車砲弾の発射には10億円を超える戦車本体が不可欠だ。FPVドローンは兵士個人が操作し、戦車を撃破できるので、費用対効果の差は無限といえるほど大きい。
数十万円のFPVドローンが、10億円を超える戦車を撃破できる、戦車兵にとってこれほど不条理で受け入れ難いことはない。
戦車内に飛び込み、自爆する衝撃映像
ここで「戦車不要論」を口走るつもりはまったくない。
ウクライナ戦線のような陣地戦では戦争に決着がつかない。戦争に決をつけるためには、膠着状態を脱して、機動戦に回帰することだ。その主役は機動戦力(有人・無人戦車を含む)以外にはあり得ない。要は、FPVドローンの特性・強みを生かして、いかにして機動戦の状況に持ち込むか……だ。
私は、テレビのニュース番組で見た衝撃的な状況に、心臓をえぐられる思いを抱いた。それは、ウクライナ軍のFPVドローンが、開放されていたロシア軍戦車のハッチから戦闘室に侵入して自爆した情景だった。
なぜ、このようことが起きたのか?
FPVドローンだから、というのがその答えだ。
ドローンの操縦者は、専用のゴーグルで、搭載カメラが捉える映像を常時受信し、あたかも自分がドローンに乗っている感覚で機体を操縦し、狙った点目標――例えば戦車上部の開放されているハッチ――に突入できるのだ。

