「一人称視点ドローン」で敵情偵察

戦場環境が変わる中で、ウクライナ軍の最前線部隊は、市販ドローンを斥候の代替品として利用し始めた。戦場はウクライナの領土内におおむね限定される。ドローン本体やドローンを制御するためのソフトウェア、誘導装置、パソコンなどは、民生品として国内に出回っているので、入手は容易だ。

現代はスマートフォンの進歩が著しく、スマートフォンで高精細な動画――宇宙船内での活動状況、災害現場からの中継など――を誰でも見ることができる。データ通信技術の発展により、ドローン操縦に不可欠なリアルタイムの映像通信が可能になった。一人称視点ドローンの出現にはこのような背景がある。

徴集される兵士、あるいは志願兵の中には、ITやドローンに関する知識・技術を持っている兵士も存在し、「ドローンを利用して敵情を偵察したらどうか」といった提案がなされ、「おもしろそうだ、やってみろ」と、部隊もこれを受け入れるだけの度量と柔軟性があったにちがいない。

銃を持つ兵の影
写真=iStock.com/Tomas Ragina
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「やってみよう精神」が生んだ新戦法

もともと民生ホビー用途に開発されたFPV機体に爆薬を搭載し、兵士が映像を見ながら操縦することで、歩兵レベルで高精度の自爆攻撃が可能になった。この戦術によって、数百ドルの機体が数百万ドル規模の装甲車両や野戦陣地を破壊する例が相次ぎ、火力投射の概念そのものに変化が生じている。

(永井宏樹著『ドローン戦入門』─第3章 FPVドローンが戦場にもたらす変革と課題/イカロス出版)

ウクライナ人の国民性として、わが国では考えられないような、何でもやってみようという自由闊達かったつな発想、それを許容する文化が感得される。彼らは国土防衛戦という過酷な環境の中で、好奇心、知識、技術を最大限発揮して、国内の民生資源をとことん活用して、強靱きょうじんな抵抗を続けている。無人システム軍の創設はこのことを象徴する具体的な例だ。

試行錯誤を重ねる中で、斥候の代替品が一人称視点ドローンへと進化した。一人称視点ドローンとはFPV(First-Person View)ドローンのことであり、一般的にはFPVドローンと略称される。