「赤字の投資」はいつまで続くのか

しかし問題はこのシェア拡大が「莫大な投資に支えられている」ということです。先述したようにUber Eatsは1回の注文で数百円の利益を得ています。出前館も注文が増えれば赤字が減る黒字構造です。これに対してロケットナウの現在の価格構造では注文ごとにマイナス数百円の赤字がでているはずです。

あくまで仮の数字モデルですが、ロケットナウが日本市場で20%のシェアを持つとすれば年間のオーダー数が6000万件規模になります。仮にそのたびに赤字がマイナス200円出るとします。すると年間の赤字は▲120億円です。

ロケットナウは日本での赤字を投資とみていて、韓国での企業体力を勘案すれば日本での投資は持続可能な範囲内だと言います。しかしプラットフォーム事業のビジネスモデルの定石として考えると年間▲120億円の投資はユーザー獲得のための広告宣伝費やキャンペーン費用の代わりだと考えてもやや重たい数字です。

ということはこれもあくまで推測ですが、チキンレースとして考えるとあと1~2年しか続けられないかもしれない。そこまでUberと出前館が持ちこたえられればロケットナウは価格戦略を考えなければいけなくなりそうです。逆に言えばロケットナウは1年以内に出前館を撤退に追い込む考えなのかもしれません。

「Uber一強」崩壊のシナリオ

ただこのチキンレース、最大の問題は3強ともに資本力が大きいことです。

Uber本社の時価総額は約22兆円です。出前館は時価総額170億円程度の小型上場企業ですがLINEヤフーが35%を保有する持分法適用関連会社です。

さらにLINEヤフーの親会社であるネイバー系の投資ファンドも出前館の18%の株式を保有しています。LINEヤフーとネイバーの時価総額を合算すると約7兆円。つまりチキンレースになるとしたら、実は親会社同士の資本力ではクーパン・ロケットナウ連合が一番脆弱かもしれません。

さらに別の要素があります。フードデリバリー戦国時代の戦いの舞台はこれまでお話ししたような消費者市場での営業力の戦いではないのかもしれません。もしこれが資本主義の土俵の戦いになるとしたら?

その場合、クーパンかLINEヤフー・ネイバー連合そのどちらかが相手に対して買収をしかけるか、ないしは両陣営の話し合いで経営統合が成立するといった資本戦略に戦いの土俵がシフトする可能性もあります。

そうなると市場シェア40%の強力なタッグが生まれます。そこから難攻不落と考えられたUber Eatsを徐々に削り取っていって市場シェア50%を割り込ませる日が来るとしたら、そこで「圧倒的な注文数を背景にギグワーカーを多数囲い込む」というUber Eatsの優位性がついに崩壊するというシナリオも起こりえるのです。

つまりこの記事の結論として言いたいことは、フードデリバリー戦国時代にはこの先、何でも起こりえるということです。

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