狙いは「日常遣いのフードデリバリー」
これまでのUber Eatsも同じで、1000円のメニューを1520円で届けてもらうのは、そうしなければいけない特別な事情があるときだからです。その同じ消費者が、そうではない日常遣いでもフードデリバリーを利用する場合は「お店価格で」という要素が必要になります。
つまり出前館が模索する戦略は、Uber Eatsが開拓した「コンビニ利用のフードデリバリー」という市場とは別に、あらたに「日常利用のフードデリバリー」という市場を創造することです。新たに生まれる新市場でのトップシェアを狙っているのです。
ここで重要な前提がひとつあります。出前館は同時に営業利益率の構造改革を進めたことで、注文単価が2500円程度という前提であれば「販売が増えれば利益が増える構造」を確保できるのです。
これで攻めの体制が整ったと思ったときに起きたのが、利益度外視で参入するロケットナウという新たな黒船の出現でした。
「送料もサービス料も0円」を支える巨大資本
【3】ロケットナウのビジネスモデル
ロケットナウは韓国の巨大企業クーパンの日本事業です。クーパンの時価総額は約4.1兆円で、その資本力を背景に日本のデリバリー市場に新規参入しました。
ロケットナウの最大の特徴は「送料0円+サービス料0円+店頭価格」を前面に打ち出していることです。この条件で加盟店を集め、赤字を投資と考えて一気に日本市場を取りにきたのです。
シンプルに表現するとロケットナウは出前館が創造しようとしたデリバリーの日常マーケットをまるごと横取りする戦略をとっていることになります。そしてその戦略はどうやらあたりだったようで、あくまで推定とはいえ新規参入の2025年からわずか1年半でロケットナウが市場シェアを急拡大した一方で、出前館もUber Eatsもシェアを喰われた形になっています。
結果としてUber Eatsも戦い方を変えています。2026年3月から約1.8万店舗で店頭と同じ価格を始めていますし、ヘビーユーザー向けのUber Oneという月額698円で送料無料と月3回以上使うとお得になるアマゾンプライムのようなサービスにも力をいれています。
ただ一般利用者に対してはUberは送料とサービス料をとっています。そして出前館が店頭と同じ価格でサービス料のみ徴収、ロケットナウが店頭と同じでサービス料、送料どちらも無料と3社の価格競争には微妙なグラデーションが生まれています。
さきほどの「スーパーとコンビニ」の比喩でいえば、消費者は日常遣いではスーパーで1円でも安い野菜や食品を手にとるものです。ですから今拡大しつつあるフードデリバリーの日常遣い市場ではこのままいけばロケットナウが圧倒的なシェアを獲得する可能性があります。
そうなるとこの先どうなるのか?
まず真っ先に出前館が苦しくなり、ついでUber Eatsがシェアを落とし始める。もしそうなればロケットナウの思惑通りの未来がやってくるかもしれません。

