※本稿は、天野惠子『84歳、現役女医のひとり暮らし』(世界文化社)の一部を再編集したものです。
なぜ人間だけに老後が存在するのか
65歳以上の高齢者は今、総人口の29%(約3600万人)。75歳以上は17%(約2100万人)に達しました(2025年総務省統計局発表)。日本は今、世界的にも例を見ない超高齢社会を突き進んでいます。
ほとんどの動物は、生殖機能の終了とともに死を迎えます。しかし、人間は閉経以降も生き続け、長い老化期間を過ごします。なぜ人間だけに老後が存在するのかといえば、次世代に知恵を伝えるためではないでしょうか。そう思うと、少しでも世の中をよくするために、残りの人生を過ごしていきたいと思うのです。
私がライフワークとして取り組み続けたいのが、性差医療の啓発活動です。男性と女性では病気の現れ方も、薬の効き方も違います。その違いを踏まえた医療の大切さは、残念ながらまだ十分に認知されているとはいえません。そのためには、後進の医師の育成が急務と考え、日々さまざまな活動を行っています。
その啓発活動の一環として、私が長年働きかけてきたのが、「女性の健康ナショナルセンター」の設立です。2024年、国立成育医療研究センター内に、女性の健康総合センターが設立され、日本初の女性の健康課題に特化した専門組織として、女性特有の疾患や性差医療に関する研究開発を推進しています。女性が生涯にわたって健康で活躍できる社会づくりを目指す画期的な組織です。
人生100年時代を支えていくためには、女性のライフステージと性差に着目した意識改革と臨床・研究は不可欠。私は日本性差医学・医療学会創立者として、このセンターの発展のため応援活動を続けるつもりです。