不幸にして両親が亡くなった場合でも、目録さえあれば、子供は金融機関に問い合わせて預金を相続することができるし、保険金の請求をすることもできる。保険の存在を知らずに請求ができなければ、せっかく掛けたお金も無駄になってしまう。
非常用袋には、ほかに1000円札を10枚ほど入れておくとよい。都市機能が麻痺した災害時は、相手がお釣りを持っておらず、1万円札は役立たない恐れがあるからだ。また、被災時は各種問い合わせにも情報収集にも携帯電話を使うので、携帯の充電器も加えておきたい。
こうしてみると、緊急に持ち出さなければならないものは、こと「財産」という点では意外と少ない。せいぜい現金と、保険とお金のリスト程度のものだ。預金通帳も保険証書も再発行が利くし、不動産の権利証がなくても所有権を失うこともない。むしろこれらの書類は自宅で保管しておいたほうがよい。
何でも持ち出そうとすると、かえって身動きが取りにくくなり、場合によっては命取りになる。何よりも大事な資産は、自分自身の命なのだ。
どんな金庫なら安心なのか?
国内金庫メーカー大手のエーコーによると、11年4月から家庭用金庫の販売数がのびているという。果たして、金庫の中のものは、どこまで安全に守られるのだろうか。
まず気になるのが耐火性。「阪神大震災では、家庭用耐火金庫の多くが火災時間に耐えきれず、中身まで燃えてしまいました。その反省からJIS規格が見直され、今は耐火性が非常に高まっています。今日本で販売されている家庭用耐火金庫なら、どんな火災でもまず心配ないでしょう」(エーコーの中村胎三社長)。
それでは、避難中に空き家に侵入した人にこじ開けられる可能性はどうだろうか。
「今は防破壊金庫といって、1mのバールで15分間こじ開けようとしても開かないという規格があります。業務用などはこの規格に適合しているものが中心なので、心配な人は小さめの業務用金庫を購入するとよいでしょう」(中村社長)
写真は家庭用の売れ筋と、家庭でも使いやすいサイズの業務用の防破壊型金庫だ。旧来のダイヤル式のほか、カード式、テンキー式、生体認証式などがあるが、売れ筋はテンキーで暗証番号を打ち込む方式だという。