金融詐欺といえば「高齢者をターゲットにしている」と考える人は多いのではないか。ところが近年、40代以下の若い現役世代に被害者が急増し、その割合で完全に高齢者を逆転している。金融業界に詳しい経済ジャーナリストの鈴木雅光さんは「かつて『金融ビッグバン』が叫ばれた当時に金融詐欺が激増しました。岸田内閣の『資産所得倍増プラン』の掛け声とともに、いま間違いなく詐欺を狙う人間が活発に動いている。ターゲットは40代以下の“あなた”です」という──。

広がる若い世代の資産運用詐欺被害

まず図表1を見てください。

これは警察庁が作成・公表している「生活経済事犯の検挙状況等について」(最新は2022年4月公表の「令和3年版」)の中で示された、「利殖勧誘事犯に関する相談当事者の年代別構成比の推移」データのうち、「20歳未満」「20歳代」「30歳代」「40歳代」の合計数をグラフ化したものです。

利殖勧誘事犯とは、「有利な資産運用法」をチラつかせて投資を勧誘し、出資金を詐取する犯罪のことです。要するに「金融詐欺」「資産運用詐欺」と思っていいでしょう。

一見して、大きな変化に気づくはずです。2016年以降、40代以下の比率が右肩上がりに上昇しているのです。

実は2016年時点で、相談件数全体の57.5%を占めていたのは「65歳以上」でした。すなわち、金融詐欺被害者は、以前は圧倒的に高齢者が多かったのです。

ところが年々高齢者からの相談比率が減少し、「65歳以上」は2021年には15.2%にまで減っています。いまでは高齢者と40歳代以下の割合がすっかり逆転してしまいました。

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若年層の被害者がどんどん増えている…

どういう状況で65歳以上の相談者比率が減少したのか。主に次の2つの要因が考えられます。

①65歳以上の相談者数自体が減った
②65歳以上の相談者数はそれほど減っていないものの、他の年代の相談者数が大幅に増加したことで、相対的に比率が減った

あるいはその両方である可能性がありますが、いずれにしても、「若年層の相談者がどんどん増えている」ことは間違いのない事実です。

資料中の「20歳未満」「20歳代」「30歳代」「40歳代」の相談者比率を合計すると、2016年時点では16.1%に過ぎませんでしたが、2021年時点では55.8%にまで増えています。この4月には2022年のデータが公表されますが、構成比率がどう変化するか注目したいところです。