「合同会社スキーム」という罠

また近年、問題になっているものに「合同会社スキーム」があります。

これは、資産運用を行う合同会社を設立し、高配当を約束して、個人投資家からその合同会社に出資してくれる「有限責任社員」を集めるというものです。資金を集めるだけ集めたら、後はその資金をどこかに逃がしてしまい、「運用に失敗しました。ごめんなさい」で終わりです。有限責任社員になった個人投資家が出資したお金は、もう戻ってきません。

なぜこんなことになってしまうのか。

合同会社では、出資者が有限責任社員になります。たとえば100万円を出資して有限責任社員になった場合、その会社が1000万円の負債を抱えて倒産したとしても、有限責任社員は出資した金額を上限とした責任しか負いません。つまり出資した100万円が無くなって終わりです。

もちろん、出資した資金を失うのは確かに痛いのですが、無限責任だと負債を全額返済するまで責任を問われるので、有限責任は出資をしやすくするための手段のひとつになっています。

この仕組みを悪用して、個人投資家をだます人間がいるのです。

投資とフィッシングのイメージ
写真=iStock.com/peshkov
※写真はイメージです

いままさに問題になっている投資会社

最近、ネットを中心に注目が集まっているある合同会社があります。

各種事業への投融資を行う投資会社だとされ、設立された合同会社の社員権を購入する、という形で個人投資家らから出資を募ってきました。ところが、怪しい話が次々表面化し、「詐欺的な行為を行っているのではないか」との疑いを持った出資者が出資金の返還を求め、集団訴訟に発展しています。

この資産運用会社は、合同会社を通じて集めた出資金を、シンガポールにある系列会社の貸付金にし、その系列会社が金融デリバティブ取引やCFD、あるいはFXを用いて運用して、出資者である有限責任社員に配当金を支払うという流れになっていました。すでに配当金の流れは止まり、出資金の返還にも応じない状況です。