中国が「再考」される理由

こうした日本と対照的なのは習近平がトップの中国です。もっとも、これは「日本は善、中国は悪」という単純な話ではありません。中国はいまなお巨大な経済大国であり、世界の工場です。ただ、投資家の間で慎重論が広がっているのは紛れもない事実です。

最大の懸念は、ルールが突然変わることです。中国政府はこれまで、学習塾、IT、不動産といった業界に予告なく規制の網をかけ、企業価値を一夜にして吹き飛ばしてきました。2021年には学習塾業界が事実上壊滅し、投資家は巨額を失いました。すべて正しくやっていても、ルールが変わっただけでお金を失いかねない。これは投資家にとって悪夢です。日本の「予測できる安心感」とは、まさに正反対と言えます。

2012年より中国共産党総書記を務める習近平氏
2012年より中国共産党総書記を務める習近平氏(写真=アゼルバイジャン共和国大統領報道局/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

経済そのものにも構造的な問題があります。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの分析によれば、2025年の成長率は目標の「5%前後」を達成したものの、その足元ではデフレ傾向が強まり、不動産不況の長期化と人口減少が景気を押し下げています。かつて経済の柱だった不動産大手・恒大集団は、巨額の負債を抱えて2025年8月に上場廃止となりました。地方政府も債務に苦しみ、若者の失業率は高止まりし、多くの大卒者が仕事に就けずにいます。さらに、伊藤忠総研は2026年の成長率が4.4%へ減速すると見込んでいます。いよいよ本格的な崩壊が始まるのではないかとの懸念の声も大きい。

加えて、「共同富裕」という政策のもとで、企業活動が政治的・社会的な目標に左右される可能性も指摘されています。純粋に儲けを追う経営がしにくくなれば、投資家は将来を読みにくくなります。反スパイ法など国家安全に関わる法律の適用範囲が曖昧なことや、データを国外に持ち出す規制の厳しさも、外国企業の不安を増幅させています。

ただし、話はそれほど単純ではない

ここで公平を期しておかねばなりません。日本にも明確な弱点があります。歴史的な賃上げが実現しても、物価上昇がそれを上回り、実質賃金の改善は道半ばです。潜在成長率は依然として低く、政府債務の重さや急速な高齢化という難題も抱えています。バフェット氏の投資は円建てで有利に進んだ面もあり、円安は裏を返せば日本の購買力が弱っている証しでもあります。「安いから買われた」という側面を忘れてはなりません。

一方の中国も、決して沈みゆくだけの国ではありません。伊藤忠総研も指摘するように、工業生産と輸出は底堅く、EV(電気自動車)やAIといった新興産業では世界を先導する分野もあります。生産能力そのものは失われていないのです。両国とも、光と影を併せ持っています。だからこそ投資家は、どちらか一方に全てを賭けるのではなく、リスクとリターンを見比べながら、少しずつ軸足を移しているのです。