日本が「再発見」される3つの理由

第1に、ルールが急に変わらない安心感です。日本は「動きが遅い」と批判されることもありますが、投資家にとってそれは欠点ではなく長所です。政治が比較的安定し、法が公正に運用され、制度が予告なく変わることはほとんどありません。何年も動かせないお金を投じる立場からすれば、この「予測できること」の価値は計り知れません。数年先の計画を、安心して立てられるからです。海外の年金基金のように、10年、20年という単位でお金を運用する投資家ほど、この安心感を重く見ます。

第2に、企業が株主を大切にし始めたことです。かつて日本企業は現金を貯め込み、株主への配慮が薄いと言われてきました。それが徐々に変わりつつあります。

2023年3月、東京証券取引所は約3300社に対し「資本コストや株価を意識した経営」を要請するという異例の一手を打ちました。株価が低迷する企業に、堂々と改善を促したのです。効果は顕著でした。第一生命経済研究所の分析によると、収益性の高い優良企業は552社から780社へ増え、課題の大きかった低評価企業は506社から312社へ減少しました。配当を増やし、自社株買いを進め、英語の資料を出し、海外の投資家に門戸を開く。そんな地道な改革が、日本株を1989年のバブル期以来の高値へと押し上げたのです。企業が「稼いだお金を株主に還元する」という当たり前の姿勢を身につけ始めたことは、投資家にとって大きな安心材料になっています。

第3に、目に見えない世界一の技術です。スマホや自動車、そしてAIの頭脳となる半導体チップは、すべて「シリコンウエハー」という薄い円盤から生まれます。そして、この世界最大のメーカーが日本の信越化学工業です。業界分析サイトの解説によれば、信越化学とSUMCOの日本2社だけで世界市場の約6割を握る寡占構造にあります。

シリコンウエハ
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工場を動かす産業用ロボットでも、ファナックや安川電機が世界の最上位に並びます。世界の産業を静かに支え、どの国も簡単には置き換えられない。そんな縁の下の力持ちが、日本には数多くあるのです。米中対立でサプライチェーン(部品の供給網)の安定が重視されるいま、こうした「代わりのきかない技術」を持つ日本の価値は、むしろ高まっています。

加えて、賃金にも変化の兆しが見えます。連合の最終集計によると、2025年春闘の賃上げ率は5.25%と34年ぶりの高水準に達し、2年連続で5%を超えました。長く続いたデフレの重い扉が、ようやく動き始めています。国民が賃金上昇を実感するには至ってはいませんが、今後、財布に入るお金が増えれば、人はもっと消費し、経済全体が元気になっていきます。人口が減り、働き手が足りない日本は、その弱みを逆手に取り、ロボットや省力化技術で世界をリードしようとしています。高齢化という課題すら、新たな成長の種になりうるのです。