飲酒欲求を抑える薬がある
ここでは、一部の一般病院でも受けることができるアルコール依存症治療についてご紹介します。
アルコール依存症の治療は、通院や自助グループ参加などの心理・社会的治療が基本ですが、それらを補完する薬物療法があります。
肝臓の三毒には、糖・酒・薬を挙げられますが、肝臓へのダメージは、酒が最も大きいのです。そこで私たちは、肥満・脂肪肝があるけれど、アルコールが肝障害の主な原因となっている方には、食事指導に加えて、積極的に薬物療法を行っています。
現在、保険診療で処方可能な薬剤は、3種類で、4薬剤あります。
1 抗酒剤(ノックビン、シアナマイド)
アルコールを分解する酵素の働きを止める薬剤です。服用後に飲酒すると、吐き気や顔面紅潮、頭痛が起こります。ただし、飲酒欲求を抑える作用はありません。また心臓が悪い方、肝硬変のある方には使用できないという制限があります。
2 飲酒欲求軽減薬(レグテクト)
脳に働き、飲酒欲求を抑える作用がある薬剤です。服用しても、抗酒剤のような症状がでないため、肝障害のある患者さまにも使用することができます。ただし、作用は強力ではないため、心理的、社会的治療と併用してはじめて断酒効果を示す薬剤といえるでしょう。
3 飲酒量低減薬(セリンクロ)
これまで「断酒」だけが治療の目標とされてきたアルコール依存症の治療で、「ハームリダクション」という考え方が広まりつつあります。お酒をやめるのではなく、ひとまず減らすことで、飲酒による害(ハーム)を減らす(リダクション)というアプローチです。
大酒家の方は、飲み始めは「少し飲んだらやめよう」と思っていても、飲むうちに制御がきかなくなってしまいます。これは、アルコールにはモルヒネのような快楽を与える作用があるからなのです。
セリンクロは、オピオイド(モルヒネ様活性を有するペプチド)受容体に作用して飲酒の欲求を抑制することで、飲酒量を減らす効果が認められています。心理・社会的治療との併用が必須で、飲酒の1~2時間前に服用します。
2019年に発売され、2021年から「学会主催のアルコール依存症研修を受けた医師などの管理下」という条件付きで、一般病院でも処方可能となりました。
今後、断酒プログラムを行っている精神科医だけでなく、一般病院でも処方可能となる医師が増えてくることが予測されます。
減酒は、できるだけ早い段階で始めることをおすすめします。
肥満・脂肪肝からの脂肪肝炎に、アルコール依存による肝障害が加わっている方は、ぜひ専門医を受診して、減酒薬の内服を相談してみてください。
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