「外圧」が看板政策と真正面からぶつかる

日本の政治には、かねて「外圧」という言葉があります。国内だけでは決めきれない路線転換を、外からの圧力を利用して進めるという構図です。ベッセントさんの発言が、高市政権にとって単なる迷惑な横槍にとどまらず、むしろ財政規律派の発言力を強める追い風として働く可能性もゼロではありません。ただし今回厄介なのは、外圧が高市さん自身の看板政策と真正面からぶつかっている点です。

また、高市さんには、外からの圧力だけでなく、自らの公約という内側からの制約もあります。飲食料品の消費税率を来年4月から2年間、8%から1%に引き下げ、給付付き税額控除と組み合わせて実質ゼロにする――この看板政策は9月5日、閣議決定されました。表明からわずか6日という異例の速さです。大丈夫ですか総理。しかし、財源をどうするかという最も重い宿題は、まだ解けていません。年間およそ5兆円、2年でおよそ10兆円規模とされる税収減について、高市さんが繰り返し強調してきたのは「特例公債には頼らない」という一点です。

地方側も無関係ではいられません。総務大臣・林芳正さんは、この減税による地方の減収がおよそ1兆6000億円規模になるとの試算を国会で明かしています。自民党の税制調査会長・小野寺五典さんは、党の会合を終えた際、出席者から「社会保障に影響が出ないような財源で対応してほしい」との注文がついたことも明かしました。財源の中身は、9月に固める税制改正大綱と、年末の予算編成にすべて先送りされた形です。

2025年6月26日、林芳正氏と小泉進次郎氏
林芳正総務相(左)(写真=首相官邸/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

赤字国債を増やさずに穴を埋める方法

さらには、中国を念頭に置いているとされる防衛費増額による財源も未決です。社会保障も団塊の世代の後期高齢者入りのころをピークにまだまだ増えていきます。しかし、ここで金利があがると利払いが増えて財政がさらに痛むことになるんですよ。なので、結果的に、インフレがどうだという以前の問題として財源問題と、それを支える日本経済のあり様についてはちゃんと考えなければならない局面にあります。

消費税減税だけでも、赤字国債を増やさずに年5兆円規模の穴を埋めるとなれば、答えは二つに一つしかありません。歳出のどこかを削るか、伸びを抑えるかです。日本総合研究所は9月1日、閣議決定されたばかりの骨太方針と日本成長戦略について、対象分野があまりに広く、政策資源が分散する懸念があると指摘し、重点分野を絞り込んだ選択と集中が不可欠だと注文をつけています。

AI・半導体をはじめとする戦略17分野に官民で370兆円超を投じるという壮大な看板の裏で、財源というごく現実的な制約が、その中身を絞り込むよう静かに圧力をかけ始めているのです。政策担当者はそんなことは百も承知でしょうが、広げた風呂敷を畳むのは政権の責任であることは言うまでもありません。どうするつもりなんでしょう。