「大盤振る舞いできない」という結論
概算要求の段階では、成長や危機管理に関わる分野であれば上限を設けない「強く豊かな日本」投資枠という、いわば青天井の仕組みまで新設されました。看板の掲げ方だけを見れば、絞り込みとは逆の、割と盛大な拡大路線にすら映ります。しかし、看板をどれだけ大きく掲げても、年末の予算編成で財務省の査定を経て実際に金額がつく段階になれば、消費減税の穴埋めという最優先事項が先に財源を押さえてしまうことになります。
その結果として、他の分野にしわ寄せが向かうのは避けがたい構図です。外からはベッセントさんが金融緩和の縮小を迫り、内では自らの減税公約が財政出動の絞り込みを迫る。高市さんは、いま二つの方向から、同じ結論――「これ以上の大盤振る舞いはできない」という結論へ押されていることになります。
この構図は、実体経済の統計にもすでに顔をのぞかせています。日本政策投資銀行が6月にまとめた調査では、資本金10億円以上の大企業の2026年度設備投資計画は前年比19.7%増と、強気な内容でした。製造業はAI・データセンター関連投資の拡大で二桁増の計画、非製造業も送配電網投資の継続や原子力関連投資の本格化、都市機能強化やインバウンド対応などで大幅増となっており、いずれも政府の戦略分野と重なる領域です。中東情勢の不確実性を受け、サプライチェーンもコスト重視から、調達先の分散を進める「レジリエンス重視」へと軸足を移しつつあります。やらなければならないことは、確かに山積みです。
「景気悪化+物価上昇」の最悪シナリオ
ところが、帝国データバンクが5月に公表した、中小企業を多く含む全国2万社超への調査では、まったく違う風景が広がっています。2026年度に設備投資計画が「ある」企業は56.7%にとどまり、3年連続で低下しました。投資を予定していない企業の半数が理由に挙げたのは「先行きが見通せない」ことで、2025年度はトランプ関税、2026年度は中東情勢の悪化が、その不透明感の主因とされています。デジタル投資に前向きな企業の割合も、大企業の51.3%に対し中小企業は31.4%にとどまり、20ポイント近い差がついています。
設備投資に踏み切る企業でさえ、資金の6割近くは自己資金でまかなっており、補助金・助成金を活用したくても「新技術・新分野への進出が条件になっていて、既存事業の拡大を狙う自社には使いにくい」といった声も寄せられています。帝国データバンクはこの調査結果を踏まえ、投資の停滞が長引けば、老朽化した設備でのコスト増と生産性低下を通じて企業の競争力が弱まり、投資と雇用の抑制が需要縮小を招いて、景気が悪化しながら物価が上昇するスタグフレーションに陥りかねないとまで警鐘を鳴らしています。
