毎週1回以上カミを祀る儀礼が行われる

その後、ンマティダはこのヘビとの間の子を出産した。この子が狩俣の人びとの先祖であり、従って、片目のヘビは、狩俣の人びとを生んだ父神“アサティダ”(アサは父、ティダは太陽)である。いま、ンマティダとアサティダは、狩俣のウプグフムトゥという拝所(宗教的聖地)で祀られている。

実は、太陽の女神とヘビとの婚姻の話が、狩俣で創世神話として語られていることはよく知られていました。私も狩俣調査に当たっての事前準備の段階で、この神話の存在を知っていました。

また、同様の神話は、宮古島ではほかに、宮古島市の市街地にある聖地・漲水御嶽に関しても語られています。しかし、まさか調査初日にヘビに遭遇し、さらにそのことに関して、狩俣の創世神話を直接耳にするとは思いもしませんでした。

神話の中でも語られているように、ヘビのカミとその妻となったンマティダは、ウプグフムトゥという聖地で祀られています。そして、狩俣にはこれ以外にもたくさんの聖地があり、そこで多くの種類の精霊/カミが祀られています。

いまは、かなり簡素化されてしまったのですが、私が滞在していた頃には、これらの聖地で、たくさんの精霊/カミを祀るための儀礼がさかんに行われていました。その数は、おびただしいもので、小規模のものを入れれば毎週1~2回は何らかの儀礼が行われていました。

宮古島の海岸
宮古島には多くの「カミ」が存在する(画像=Ikusuki/CC-BY-2.0/Wikimedia Commons

50〜100のカミの名を歌う高齢女性

この儀礼は、神役と呼ばれる女性たちによって取り仕切られていました。神役の女性は、だいたい50歳くらいから60をすぎたくらいまでの住民の中から選ばれます。その選び方は、精霊/カミの前で行われる神聖なる「くじ」によるものです。

神役たちが精霊/カミを祀る方法は、神歌と呼ばれる神聖な歌を歌うというものです。神歌の歌詞は、先輩の神役から後輩の神役へ、口頭で伝えられてきました。神歌の種類は多く、またそれぞれの歌の歌詞も膨大なものですが、その歌詞の大部分は、精霊/カミの名前から構成されていました。そこに登場する精霊/カミの名前は、50とも100ともいわれています。

たまたま、手元に神歌を記録した資料があるので、そこから精霊/カミの名を取り出してみます。漢字表記が難しい宮古島の言葉なのでカタカナで書かれています。読みにくいかもしれませんが、眺めてください。

アサティダ、ンマティダ、イスツ、ティンヌマツカニ、ティンドウ、テラヌプウズ、ウンツカサ、ヤマヌフシライ、クルマカン、ソバアギ、ウイヌピャー、トゥガマル、マヤヌマツメガ、スマヌヌス、ニッジャカニドヌ、タラマウプツカサ…………

たくさんある精霊/カミの名のごく一部です。