縦横2メートルの小さな部屋

施設の中で大きくなったヒグマ同士で交尾し、子グマが生まれることもあった。施設では、メスが出産するための産室が設けられていた。コンクリートで作られた、縦横2メートル、高さ1.5メートルの小さな部屋だ。1月に入ると、妊娠したと思われるメスは産室に入れられて冬眠に入る。出産は、大体が1月末から2月頭にかけてだった。

最初の冬に、課長が産室の中を見せてくれた。産室の天井には、換気口と観察窓を兼ねた穴が開いていて、鉄の蓋が被せてある。蓋を開けて中を覗く。真っ暗だが、目が慣れてくるとうっすらとクマの輪郭が見えてくる。

突然、「ギャーギャー」と子グマが鳴き出した。思わず前田は、蓋を閉めてしまった。しかし課長は、子グマが鳴いていても観察を続けて問題ないという。ユキコという名前のその母グマは子育ての経験が豊富で、とても温厚なメスだった。