日本初の快挙
40枚ほど溜まると前足でかき集め、後ずさりしながら来た道を戻ってゆく。
そして冬眠穴まで戻ると、ササの葉を引っ張り込んだ。長い冬を暖かく過ごせるように、寝床を作っていたのだ。尾根から冬眠穴まで後ずさりしながら戻る間に、せっかくとったササの葉が前足の隙間からこぼれ落ち、量が半分くらいになってしまう。
それでも懸命に葉を集め続ける小さなクマの姿が健気に思えた。野生下で、冬眠のための準備行動がきちんと観察されたのは、日本で初めてとなる快挙だった。
ヒグマがササを集める行動は翌日まで見られたが、その後は穴から完全に体を出すことはなくなった。テントを張ることもできずに青井たちは観察を継続した。風が容赦なく体温を奪い、雪が体に積もって全身真っ白になりながら、じっと動かずに冬眠穴を見つめ続けた。
ヒグマはたまに入り口付近に出てきて雪を舐めるくらいだったが、青井たちが弁当を食べ始めた途端に顔を出したことが2度あった。鋭い嗅覚で食べものの匂いを嗅ぎつけたのかもしれない。
折しもそのころは選挙の前で、田舎道とはいえ選挙カーが通ることもあった。大音量で候補者の名前を連呼する声が聞こえてくると、起き出したクマは不思議そうな表情で耳を傾けていたという。
12月10日を過ぎると、ヒグマは穴から顔も出さなくなった。12月15日、完全に冬眠に入ったと判断し、青井は観察を終了した。
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