“郵便受け”が一体化したドアは隙間だらけ
さらに、当時は郵便受けが一体化したドアも少なくありませんでした。
ポスト開口部や枠まわりの気密処理が弱い場合、わずかな隙間風の出入りが室内環境に影響を及ぼします。
夏は、せっかく冷房した空気が逃げていきますし、冬の冷たい空気は重いため、足元に広がります。玄関から廊下、そして各居室へとつながる動線は、家の中の室温差を大きくしてしまいます。
夏は、以下のような現象が起こりやすくなります。
・玄関から冷房の冷気が漏れ、電気代がかさむ
・玄関側の部屋だけ蒸し暑く、寝苦しい
・玄関を開けた瞬間に、ムワッとした熱気が入り込む
さらに冬には、以下のような現象が起こります。
・リビングは暖まるのに廊下が寒い
・玄関側の寝室だけ底冷えする
・玄関の近くにあるトイレや浴室がとても寒い
とくに脱衣所の平均室温は、住む人の健康寿命を左右するという調査もあります。
慶應義塾大学伊香賀名誉教授らによれば、「温暖住宅群」(脱衣所の平均室温14.6℃)と「寒冷住宅群」(脱衣所の平均室温12.4℃)に分け、要介護状態になる人が50%を超える年齢を比較すると、前者で要介護率が50%を超えるのは、76歳。後者は、80歳という結果になりました。
つまり、脱衣所の平均気温が約2℃違うだけで、健康寿命が4年も縮まるということです。
玄関ドアは、住宅全体の熱損失割合で見れば窓ほど大きくはありません。しかし、体感温度や温度ムラ、それによる健康への影響という観点でみれば、決して無視できない存在なのです。
マンションのドアは2時間程度で対策できる
では、「そんな玄関ドアがついた住宅を購入してはいけないのか」というと、そういうことではありません。
近年は、断熱材を内蔵した高性能ドアが普及しており、既存の枠を活かして上から新しいドアを取り付ける「カバー工法」による更新も一般的になっています。施工は90~120分間程度で完了するケースが多く、住みながらの工事も可能です。
断熱性能の高い玄関ドアに更新すると、ドア表面温度が上がり、ドアからの輻射熱の影響が軽減されます。廊下や玄関まわりと、リビング等との室温差が緩和され、室内の温度ムラも改善されます。ポスト一体型ドアを廃し、気密性を高めることで、隙間風対策にもなります。夏は逆に、外からの熱をドアが跳ね返すため、玄関や廊下の温度上昇が抑えられます。
技術的には、玄関ドアの断熱性能は大きく改善できるのです。



