玄関の断熱リノベの盲点
しかし、ここで戸建住宅とは決定的に異なる中古マンション特有の事情があります。
問題は「ドアの性能そのもの」ではないのです。
マンションでは、玄関ドアは「共用部」に分類されます。専有部分のように所有者が自由に変更できるわけではありません。外観の統一性や防火性能の維持といった観点から、管理組合の管理対象になっているからです。
玄関ドアの交換は、原則として管理規約に基づいて、管理組合の承認が必要になります。
管理規約とは、区分所有法に基づき、それぞれの管理組合が管理・使用方法を定めたルールブックです。共用部の取り扱い、工事の可否、改修の手続きなどが定められています。
国土交通省が定めているひな型、「マンション標準管理規約」を見てみましょう。
第22条
1 共用部分のうち各住戸に附属する窓枠、窓ガラス、玄関扉その他の開口部に係る改良工事であって、防犯、防音又は断熱等の住宅の性能の向上等に資するものについては、管理組合がその責任と負担において、計画修繕としてこれを実施するものとする。
2 区分所有者は、管理組合が前項の工事を速やかに実施できない場合には、あらかじめ理事長に申請して書面又は電磁的方法による承認を受けることにより、当該工事を当該区分所有者の責任と負担において実施することができる。
つまり、窓も玄関ドアも、原則として、管理組合が計画修繕すべきものとされています。
ですが、修繕積立金が不足している管理組合も多く、修繕費用の高騰も続いていることから、管理組合が窓や玄関ドアを計画修繕の一環で高断熱化を図れるマンションは多くありません。
管理規約が「ひな型通り」とは限らない
窓枠や玄関扉も、理事長承認が得られれば、区分所有者(住宅のオーナー)がリノベできるとありますが、「マンション標準管理規約」はあくまで“モデル”です。
上記の条文は、マンションの断熱・省エネ性能の向上を図ることを目的として、2004年の改訂であらたに追加された項目です。各マンションの管理規約が、この改訂内容を反映しているかどうかは別問題。改訂前の条文のままで運用されているマンションも少なくありません。
仮に管理規約が改訂されていない場合、
・窓のカバー工法が認められない(内窓設置は可)
・玄関ドアの交換が原則不可
・理事会判断で実質的に拒否される
といった可能性もあります。
購入を考えている中古マンションの「価格が適正かどうか」と同じくらい、「将来どこまで性能改善が可能か」は重要な判断材料なのです。
だからこそ、購入前に以下はチェックしておきたいところです。
・管理規約に標準管理規約改定(第22条第2項相当)の内容が反映されているか
・過去に窓や玄関ドアの個別更新事例があるか
・理事会承認の運用実績があるか
・将来的な大規模修繕計画に窓更新が含まれているか
これらを確認せずに購入すると、「改善したい」と思ったときに、制度上できないという事態に直面する可能性があります。
中古マンションを選ぶとは、間取りや眺望を選ぶことだけではありません。
そのマンションが「性能向上を許容する文化を持っているかどうか」を見極めることでもあるのです。
