次にどう生かすか語らせる

三つ目のフェーズも見ておきたい。

「学びへの接続」というマネジメント行動が、有意であった。ここで言う「学びへの接続」とは、うまくいった点・いかなかった点を、本人の言葉で整理してもらったり、結果だけでなく、考え方や判断のプロセスを振り返る対話をしたり、次にどう活かすかを一緒に考えるといったことだ。

AI環境では、経験が経験として蓄積されにくい。タスクは片づくが、そこから何を学んだかが本人のなかに残らない。また、AIという個人ツールは組織的なノウハウに転嫁しにくい。部下の多くは、「自分の仕事が早く済んだ」時点で仕事を終えてしまうからだ。そこに、組織的な共有や振り返りを促すのが上司の仕事だ。

終わった時点で終わらせず、言葉にさせることによって経験学習を回し、片づいたタスクを経験に変わることの意味が、AI時代にはより重要になっていそうだ。部下のAIとの協働を「次」につなぐために調整することが上司の役割であると言えるだろう。

AI利用とマネジメント能力は無関係

ここで、注意すべきデータがある。同調査が職種別に、AI利用率と有効なマネジメント行動の実態を並べたところ、両者はまったく相関していなかった。

たとえば商品開発・研究職は生成AI利用率が82.6%と最も高い一方、「仕事の枠を示す」「裁量の提示」「思考の深さを問う」「学びへの接続」といったマネジメント要素のスコアは、いずれも他職種より低い水準にとどまる。AIをよく使っている職場が、AI環境に適したマネジメントをしているとは限らない。

したがって、両者は別のトレーニングを要する。AIリテラシー研修をマネジャーに実施しても、それだけではマネジメント行動は変わらない。逆に言えば、AIツールの習熟度が低いことを理由にマネジャー教育を後回しにする必要もない。

【図表8】職種別に、AI利用率と有効なマネジメント行動
出所=パーソル総合研究所「AI環境における人材とマネジメントに関する定量調査」