ヒットした商品やサービスの意思決定はどのようにされているか。トオク代表でコンセプターの吉田将英さんは「星野リゾートのフラッグシップブランド『星のや』は、普通の宿泊施設の客室にはあるのにあえて置いていないものがある。そうした意思決定は星のやのコンセプトからうかがい知ることができる」という――。

※本稿は、吉田将英『コンセプト・ワークス 正解があふれる時代の「自分ならでは」のつくりかた』(WAVE出版)の一部を再編集したものです。

女性は自然な朝の光であふれたホテルの部屋で目を覚ます
写真=iStock.com/Karlos Garciapons
※写真はイメージです

コンセプトとは、多面的である

最初に、「コンセプトとは何か?」という話を、この本の出発点にしたいと思います。前作『コンセプト・センス』(WAVE出版、2024年)で私は以下のように定義をしました。

コンセプトとは、社会の既存の「当たり前」が見落としてきた、人々がまだ自覚できていない満たされていない欲求を満たし、理想の社会に今より近づくための「提案の方向性」のことであり、同時にアイデア創造の源泉であり、企画の骨子でもあります。

……われながら、長い定義ですね。うーん、苦しみの痕跡を感じます。さて何が苦しかったのか振り返ると、コンセプトという存在の多面性が思い出されます。

それは、たとえば「スマホを知らない人にスマホとは何か? 端的に説明してください」という難しさと似ています。「電話です」「地図です」「新聞です」「持ち歩けるテレビです」――どれもその通りだけど、どれかだけで説明すると「それがすべてってわけじゃないんだけどな……」というしっくり来なさが残る。コンセプトもまさに、そんな存在です。

無理やり一言にすることで、かえってわかりにくくならないように、まずはスマホで言うところの「個別の機能」をいくつか提示してみます。