夢と魔法の王国のトイレ、水飲み場とは

コンセプトは「らしさの源」です。コンセプトが定まっていることによって、その企画がほかの似たような存在といかなる点で「異なった存在たり得るか」――コンセプトはそんな、目指すべきありかたの定義そのものになります。

たとえば、東京ディズニーランドのコンセプトは「夢と魔法の王国」とされています。テーマパーク全体が、日常とは一線を画する世界観と体験の提供を目指すことが定義されているわけですが、同時に「どのような問いに答えを出すことで、コンセプト通りの企画にできるか」の出発点にもなっています。

ディズニーランド
写真=iStock.com/smckenzie
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「アトラクション」や「パレード」のようなわかりやすい変数だけでなく、夢と魔法の王国の「トイレとはどんなものか」「水飲み場とはどんなものか」「食事とはどんなものか」「動線設計とはどんなものか」「植栽とはどんなものか」――あらゆる変数をコンセプトに照らして考えることで、それらすべての変数から、「らしさ」は醸し出されていきます。

企画とは、このような「大小無数の変数によって複合的に認知されるもの」なので、その企画のキャラクターが崩壊せず、統一感を帯びていかないと、「らしさ」は作り出せないということでもあります。

「星のや」の客室にテレビがない理由

他方、コンセプトは引き算的な意思決定にも役に立ちます。星野リゾートのフラッグシップブランド「星のや」には、客室にテレビが置かれていません(※1)。その理由は、星のやのコンセプトからうかがい知ることができます。

社長の星野佳路氏は「現代を休み、圧倒的非日常を提供することがコンセプトの星のやに、現代社会の象徴ともいえるテレビは不要だと考えた」と述べています。

テレビのない客室のみならず、チェックイン時にスマートフォンをフロントで預ける「脱デジタル滞在」というコンセプトの宿泊プランにまで展開は及んでいます。

コンセプトは、その企画の「らしさ」を足し算的に発想するだけでなく、「通常、その概念につきものである変数に、“なくてもいい”という発想」をも可能にしてくれるのです。

コンセプトを「らしさ」の足がかりに、足し算と引き算両面から企画の存在感が「際立つ」。選択肢にあふれる現代を生きるわれわれに対して、コンセプトは「この企画はまさに私のような人間向きだ!」と、行動のお膳立てをし、その企画でなくてはならない必然性を感じさせてくれます。

※1 「星のや東京」には普段は鏡のように部屋の雰囲気に馴染み、必要なときだけ使えるテレビを設置