JR東日本が頑張れば国が潤う

そのような経緯から、いまさら大井町駅前の土地を返却されてもかえって国が困惑することは容易に考えられる。JR東日本が始めた不動産事業は軌道に乗っていることだし、ここは同社に任せればよい――。国がそう考えるのは自然なことだろう。

なぜなら国にとっても悪い話ではないからだ。JR東日本の不動産事業などが順調に推移すればその分国に納める法人税などの税収が増えて国庫は潤う。

JR東日本の2026年3月期の連結損益計算書を見ると、法人税などの合計は853億1400万円で、前年同期の717億1000万円よりも136億0400万円増加した。納税制度上当たり前ながら、不動産事業のリスクはJR東日本が背負い、その果実の多くは国がありがたく受け取り、旧国鉄の債務の償還にも充てられる――。

こう考えれば大井町トラックスにモヤモヤしなくても済む。

大井町トラックスから見た東京総合車両センター(深夜)
画像提供=東日本旅客鉄道
大井町トラックスから見た東京総合車両センター(深夜)

旧国鉄の長期債務の償還の考え方から言うと、大井町のようなJR各社が保有する都心の一等地に空きが出た場合、売却して国に売却益を納税するか、または国または国鉄清算事業団のような組織に譲渡の二択となる。

前者がそうたやすいものではないことは先に説明したとおりだ。そして、後者のように無償で譲渡となるとJR各社は丸々損するように見えるが、そうではない。

大井町トラックスの課題

国鉄から引き継いだ土地には固定資産税などの納税が全額または一部が免除されてきたが、株式市場に上場を果たしたJR各社が保有する土地はすべて課税されることとなった。上場を果たしたJR各社にとって、都心の一等地が遊休地となってしまったら多額の納税に追われるだけとなり、それならば物納したほうがよいというのは相続で生じる問題と同じだ。

どちらも事実上認められないのだから、JR各社が自ら不動産事業に進出して利益を上げる以外の選択肢を見いだしづらい。

順風満帆のスタートを切ったその大井町トラックスには課題も見える。

先に筆者は大井町トラックスの想定利用者数を単純に京浜東北線、大井町線、りんかい線それぞれの乗降者数、それから各路線どうしの乗換者数から求めた。しかし、この手の大規模な都市再開発事業では大井町トラックスに行きたいという人々をより多く集められるかどうかが成功の鍵となる。