鉄道ではない事業でより多くの利益

筆者はJR東日本の回し者ではないという点を断ったうえで申し上げると、JR東日本が頻発させた輸送トラブルをはじめ、同社の鉄道事業への不満と同社が多方面に事業を展開している点とは切り離して考えたほうがよい。

先に挙げたJR東日本の2026年度3月期の連結決算書を見ると、鉄道事業やバス事業から成る運輸事業の売上高は1兆9458億円でセグメント利益は1761億円であった。

すでに記したように同社の流通・サービス事業と不動産・ホテル事業とを合わせた売上高は9138億円と運輸事業の半数にも満たないが、セグメント利益は1809億円と運輸事業を上回る。

JR東日本は今後も鉄道事業を安定して続けるために、多くの利益を得られる不動産事業などを積極的に展開しているのだ。同社が責められる時があるとすれば、(あってはほしくないが)大井町トラックスが事業として行き詰まったときだろう。

大井町トラックスにあるThe TRAVELERS HOUSE ROOFTOP BAR
画像提供=東日本旅客鉄道
大井町トラックスにあるThe TRAVELERS HOUSE ROOFTOP BAR

別のモヤモヤも聞いた。大井町トラックスとなった土地は元々旧国鉄の所有で、1987(昭和62)年4月1日に実施された国鉄の分割民営化時にJR東日本へ無償で譲渡されたものであるという点である。

現・大井町トラックスのような都心の一等地であってもJR東日本に無償という破格の条件で譲り渡された理由は、同社がこの場所で今後も鉄道事業を続けるという前提が存在したからだ。その前提がなくなったのであれば、国なり沿線の地方公共団体なりに無償で払い下げるべきではないのか、という意見がある。

さらには、JR東日本が用地を売却し、その売却代金を2026年2月現在でもまだ14兆9538億円残っている旧国鉄の長期債務の返済に充当するべきだ――というのもある。

国鉄から無償で譲られた土地

筆者もかつては同様に考えていた。ただそれは、1998(平成10)年10月22日に日本国有鉄道清算事業団(以下、国鉄清算事業団)が事実上破綻して消滅した経緯を知り、そうは思わなくなったのだ。

国鉄清算事業団とは、国鉄の長期債務、そして遊休地などの資産を引き継ぎ、資産を売却することで長期債務の償還に充当することを目的として設立された特殊法人である。旧国鉄の長期債務の約37兆1000億円のうち、約25兆5000億円が同事業団に承継された。

国鉄が保有していた遊休地のなかには都心の一等地にある価値の高い土地も多く、土地の売却が順調に進んだところも多かったが、さまざまな問題に見舞われて最終的には頓挫してしまう。

例えば、バブル期のように土地の価格が上昇している時期、周辺の土地の価格の暴騰を抑えるために国の指示で売却を控えるように言われて売り抜けられないケースも多かった。

そうかと言ってバブル崩壊後は国鉄の分割民営化時に想定していた売却価格を大きく下回ってしまい、仮に売れても国鉄の長期債務はあまり減らない。

結局のところ、国鉄清算事業団が抱えた旧国鉄の長期債務は利息がかさんで約28兆3000億円と、引き継いだ当初よりも増えてしまい、まさににっちもさっちもいかなくなったのだ。