もともとはJR東日本の社宅だった
大井町トラックスの敷地の一部はJR東日本の社宅の跡地である。
この社宅はJR東日本の前身の国鉄が自社の職員の住宅として1965(昭和40)年から翌1966(昭和41)年にかけて建設した広町アパートをルーツにもつ。約2万9000平方メートルの敷地に12階建てのアパートが6棟建ち並んでいた。
1棟当たり120戸、6棟合わせて720戸が居住可能で、合わせて2000人から3000人ほどの人たちが暮らしていたという。
老朽化などによって社宅は取り壊されたが、跡地に新しい社宅は建てられず、大井町トラックスとなった。別の場所に社宅を建設したのかとJR東日本に聞いたところ、そのようなことはないそうだ。
JR東日本で鉄道事業に従事していた社員数は2014(平成26)年3月31日現在で4万9537人いたが、10年後の2024(令和6)年3月31日現在では3万8576人と1万0961人減少した。
大井町トラックスとなった場所にあった社宅にいた人たちは同社の別の社宅などへの引っ越しで十分対処できたのだという。大井町トラックスとならなかった残る同社の社宅跡には品川区役所が新しく建てられる。
整備費1200億円は適切な投資か
JR東日本は大井町トラックスの整備に当たって約1200億円(※)を投じる。同社によると、2031(令和13)年度以降の営業収益として約150億円を見込んでいるという。
※ JR東日本「2026年3月期決算および2027年3月期経営戦略 説明資料」より
営業利益は公表されていないが、JR東日本の2026年3月期の連結決算書に記載されたセグメント別の売上高、セグメント利益によると、同社の流通・サービス事業と不動産・ホテル事業とを合わせた売上高は9138億円、セグメント利益は1809億円であったから利益率は19.8パーセントとなる。
この数値を大井町トラックスの営業収益の予測値に当てはめると、利益は30億円と求められた。利益だけで投資額をまかなおうとすれば、回収には40年を要する。
JR東日本としては大井町駅に多くの人々が集まることから、大井町トラックスの集客力には問題ないと判断したのであろうが、果たして適切な投資なのだろうか。そこで、大井町駅の集客力を検証してみた。
『2021(令和3)年版 都市・地域交通年報』(運輸経済研究所、2024年7月)の「各駅旅客発着通貨状況」によると、コロナ禍直前の2019(令和元)年度の1日平均の大井町駅の乗降者数は、JR東日本が13万9274人、東急電鉄が7万4591人、東京臨海高速鉄道が8万8092人で、合わせて30万1957人だった。
大多数はそれぞれの大井町駅を通勤や通学で1日に2回に通る人たちと考えられるから、正味15万979人と言ったところであろう。


